空き家の解体費用は、建物の構造や敷地面積、立地など、多くの要素によって変動します。さらに付帯工事の有無、老朽化の進み具合、依頼時期など個別の状況も総額に影響するため、事前に費用目安を把握したうえで、スムーズに解体を進められるようにしましょう。
本記事では、空き家解体の費用相場や金額に影響を与える要素、費用の確保が難しい場合の対応策などを解説します。
目次
空き家を解体する際の費用相場
空き家の解体費用は、建物の構造や規模によって大きく変わってきます。例えば同じ30坪の住宅でも、100万円程度で解体できる場合もあれば、構造次第で240万円ほどかかるケースも珍しくありません。
一般的な木造住宅は、解体費用を比較的安く抑えやすいのが特徴です。一方、鉄骨造や鉄筋コンクリートの住宅は、頑丈な構造であるぶん解体作業に労力と時間がかかり、費用も割高になります。
また、屋内や敷地内に荷物が残っている、周辺の道路が狭く重機の搬入が困難など、現場の状況に応じてさらに費用がかさむ可能性もあるでしょう。
空き家の解体費用を左右する要素
空き家の解体費用に大きく関わるのは、主に次のような要素です。
- 家の立地
- 建物の構造
- 建物や敷地の広さ
- 老朽化・損傷の具合
- 付帯工事の有無
- 依頼する時期
それぞれどのように解体費用へ影響を与えるのか、詳しく見てみましょう。
家の立地
空き家の立地が以下に当てはまる場合、解体費用は高くなる傾向にあります。
- 近隣に住宅が密集している
- 現場周辺の道幅が狭い
- 現場が階段の先にある
- 敷地と道路のあいだに高低差がある
こうした状況では、足場を立てられなかったり、重機の搬入が難しくなったりして、手作業の工数が増えがちです。多くの人員が必要になるぶん人件費がかかり、解体費用の総額も上がりやすくなります。
また、解体したい空き家と隣家の距離が近い場合、入念な騒音対策が求められると同時に、隣家に損傷を与えないよう慎重に作業を進めなければなりません。工期が長引けば、それだけ費用も高くなります。
現場周辺の人通りや交通量が多いときには、ガードマンを配置するための費用も必要です。
建物の構造
解体したい空き家の構造によって、費用相場は下表のように異なります。
構造 | 坪単価の相場 |
木造 | 3万~5万円/坪 |
鉄骨造 | 5万~7万円/坪 |
RC造(鉄筋コンクリート造) | 6万~8万円/坪 |
木造住宅は費用を比較的抑えやすく、鉄骨造、RC造の順で高額になっていきます。構造の違いが費用相場に影響を与える主な要因は、解体作業の難易度や必要な人員数によるものです。
解体費用の大部分は、人件費が占めています。木造住宅は建材が柔らかいものも多く、鉄骨造やRC造に比べて少ない人員で解体できる場合には、人件費を抑えやすくなるでしょう。
対する鉄骨造やRC造の建材は、頑丈で耐久性が高いため、解体作業に多くの人員が必要です。さらに、建物の重さに対応できるよう基礎も強固に施されていることから、作業の負担が増す傾向にあります。
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建物や敷地の広さ
空き家の解体費用は一般的に、建物や敷地の広さが大きくなるほど割高になります。30坪・40坪・50坪の建物を例に、構造別の解体費用相場を見てみましょう。
30坪 | 40坪 | 50坪 | |
木造 | 90万~150万円 | 120万~200万円 | 150万~250万円 |
鉄骨造 | 150万~210万円 | 200万~280万円 | 250万~350万円 |
RC造(鉄筋コンクリート造) | 180万~240万円 | 240万~320万円 | 300万~400万円 |
規模の大きな建物は、取り壊しに時間や労力がかかるだけでなく、解体にともなって発生する廃棄物の量も増えやすく、処理費用の負担も大きくなります。大型重機による作業を要する場合は、そのぶんのコストも発生するでしょう。
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老朽化・損傷の具合
火災や自然災害によって空き家が損傷していると、解体作業は複雑になりやすく、費用も高額になる可能性があります。例えば、火災や災害の影響で廃材が広範囲に散らばっている場合、それらを収集・分別したうえで処分しなければなりません。通常の解体工事よりも工数が増えることから、追加費用が発生します。
空き家の所有者などが自分自身で廃材を処理できれば、追加費用は抑えられますが、破損した建材のなかには鋭利なものもあり、安全面に十分注意が必要です。思わぬケガや事故を招かないためにも、専門業者への依頼をおすすめします。
また、老朽化が進んだ空き家は、解体中の倒壊リスクに配慮しながら慎重に作業を進めなければならず、費用は割高になるでしょう。
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付帯工事の有無
空き家の状況次第では、付帯工事による追加費用が発生します。 付帯工事が必要になるのは、主に次のような状況です。
- ブロック塀や庭木などの撤去が必要
- 空き家の中に残置物が多くある
- 地中埋設物が見つかった
- 建材にアスベストが含まれている
さらに、解体現場の地盤の状態も費用総額に影響します。 地盤が不安定だと、作業員の安全確保のために、通常の足場に加えて支柱などを追加で設置する必要があるほか、解体後の地盤補強工事が求められる可能性もあるためです
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依頼する時期
解体費用は、工事を依頼する業者が繁忙期にあるか、閑散期なのかどうかでも変動します。年度末から新年度にかけての3~4月、年末などは、引越しや新築工事が多くなりやすく、解体業界も繁忙期です。これらのタイミングで解体工事を依頼する場合、閑散期と比べると費用相場が高くなるケースがあります。
解体業界の閑散期にあたるのは、2月や8~9月など、引越しや新築工事が比較的少ないシーズンです。空き家の解体を急がない方は、これらの時期に依頼を検討するとよいでしょう。
空き家の解体費用は誰が負担する?
解体費用の負担者は、空き家の所有状況や土地の権利関係から判断できます。相続した空き家と借地に建つ空き家のそれぞれを例に、解体費用の負担者が誰になるのか具体的に見てみましょう。
相続した空き家の場合
相続した空き家の解体費用は、相続人が負担するのが一般的です。遺言での指定がない場合、法定相続人にあたるのは配偶者、直系卑属(子、孫)、直系尊属(親、祖父母)、兄弟姉妹と民法で定められています。相続権の優先順位が高い方が相続権を放棄すると、次の順位の方へ相続権が移行する仕組みです。
相続人が複数いるときには、当人同士で話し合って遺産分割を行います。これは、空き家の解体費用といった負の遺産でも同様です。相続した空き家の解体時は、相続人同士で誰が費用を負担するのか話し合い、合意を得ることが求められます。
借地に建つ空き家の場合
借地に建っている空き家の処分方法は、空き家ごと借地を買い手へ売却する「建物の売却」と「借地契約の解除」の2パターンが考えられます。地主と結んだ借地契約の解除(合意解除)を行う後者のパターンだと、原則は借地人が建物を取り壊し、地主に借地を返還しなければなりません。この場合、解体費用を負担するのは借地人となります。
ただし、契約時に「建物譲渡特約付借地権」を設定していれば、地主に対して空き家の買い取り請求権を行使することも可能です。契約内容によって処分費用の扱い方は変わるため、借地の空き家解体を考えている方は、まず契約状況を確認し、必要に応じて専門家に相談してみましょう。
空き家の解体費用が足りない場合の対応
空き家を解体したいものの、費用を確保できるか不安があるという場合、以下4つの対応策を試してみてください。
- ローンを利用する
- 補助金を活用する
- 土地の売却益を活用して解体する
- 別の解体業者への依頼を検討する
ローンや補助金制度を活用できる場合、工事費用の負担を抑えやすくなりますが、すべての空き家解体が対象になるとは限りません。早めに情報を集めておき、状況に応じた最適な対応策を取り入れましょう。
ローンを利用する
空き家の解体費用に利用できるローンには、いくつかの種類があります。
- 空き家解体ローン
- 住宅ローン
- プロパーローン
- フリーローン
ローンごとに借入の条件や限度額、金利に違いがあります。それぞれの特徴を比較検討したうえで、自分自身の希望や工事内容に適したものを選びましょう。
空き家の解体に利用できるローンを紹介|活用する際の注意点も解説
補助金を活用する
地方自治体のなかには、空き家解体を対象とした補助金制度を独自に設けているところがあります。静岡市で利用できる空き家解体に関連した補助金制度の例は、以下のとおりです。
- 要安全確認計画記載建築物除却事業
- 静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金
- 静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金
- 静岡市住宅・建築物等耐震化促進事業費補助金
制度によって申請条件や補助金額、必要書類などが異なるほか、同一の制度でも年度ごとに詳細が変わる場合があります。地方自治体のホームページや窓口を通して、最新の情報を確認しておきましょう。
静岡市の空き家解体に使える補助金制度一覧|利用の際の注意点も解説
土地の売却益を活用して解体する
土地に価値がある場合、空き家が建っている状態のまま売りに出し、その売却益で解体工事を行うのも一つの選択肢です。土地の評価額によっては、自己資金を用意せずとも、解体工事費用を捻出できます。
さらに、売却益から解体費用を差し引いて手元に残った金額は、利益として受け取ることが可能です。仮に土地の売却額が2,000万円、解体費用が200万円だとすれば、売却額2,000万円から解体費用を丸ごと捻出したうえで、残りの1,800万円は利益になります。
ただし、買主との交渉次第では、売却額が解体費用より下回る可能性もある点を念頭に置いておきましょう。また、買主が見つかるまでに時間がかかるケースも珍しくありません。
複数の不動産会社に相談し、売却額を比較しつつ有利な条件で売却できる買主を絞り込むなど、土地の売却益を前提に解体工事を行うには、事前のリサーチが大切になります。
別の解体業者への依頼を検討する
空き家の解体費用は、依頼する施工業者によっても差があります。最初に見積もりを依頼した一社の費用が高額でも、別の業者では予算内に収まる可能性があるでしょう。
特に、現場から業者の所在地が遠いと、トラックや重機の運送費がかさみやすくなります。追加費用の発生を極力避けるためには、解体したい空き家の近辺で依頼できる業者をいくつか選定し、見積り書を比較してみてください。
ただし、業者選びの際は、所在地の近さや費用の安さのみを重視するのではなく、施工実績などもふまえて、信頼できる依頼先を見極めることがポイントです。
解体工事費用の見積もり内訳を解説|確認すべきポイントや注意点も紹介
空き家の解体費用に関するよくある質問
空き家の解体時には、ある程度まとまった費用が必要になり、ローンや補助金制度を活用できるとしても、慎重に依頼を検討したいと考えるのが当然です。ここからは、解体工事にあたって疑問を感じやすいポイントと、その回答を紹介します。解体後の後悔やトラブルを防ぐためにも、不安はきちんと解消しておきましょう。
解体せずに空き家を処分する方法はある?
空き家を処分するために、必ずしも解体工事が必要になるわけではありません。解体せず空き家を処分する方法は、「建物付きで土地を売却する」「賃貸で運用する」の主に2パターンが考えられます。
解体せずに土地と一緒に売る
建物を残したまま古屋付きの土地で売却する場合、買主に土地・空き家の管理を任せられます。売主である自分自身は、解体工事の費用や手間を負担する必要がありません。
ただし、老朽化や損傷が激しいなど建物の状態がよくないと、買主は見つかりにくくなり、たとえ買主が現れても、解体費用分の値引きを交渉される可能性があります。希望の値段では売却できないリスクもあることを理解しておきましょう。
賃貸で運用する
空き家をそのまま賃貸運用する場合にも、解体費用は発生しません。建物の管理を入居者に任せながら、家賃収入も得られます。今すぐではなく将来的に土地の活用を考えている方や、一時的な収入源が必要な方には魅力的な選択肢です。
その反面、建物の状態がよくないときにはリフォームが必要になり、修繕費が発生する可能性もあります。賃貸運用の期間や条件によっては、リフォームにかかった修繕費を回収できず、結果的に損してしまう事態にもなりかねません。
賃貸運用を考えている場合、不動産会社に相談しながら、リフォームの要否を含めた運用計画を立てましょう。
相続放棄すれば解体費用を負担しなくていい?
相続放棄をすると、財産や資産だけでなく、負債も受け取る必要がありません。故人が遺した空き家に関する税金、そして解体費用の負担にも関与しなくて済みます。
ただし、相続放棄は万能な解決策ではなく、状況によっては空き家の管理から免れられないケースもあるため、注意が必要です。例えば、相続放棄後も、新たな相続人が見つかるまでは財産管理人として空き家の管理・保存義務が生じます。
複数いる相続人の全員が相続放棄をするときには、最後に放棄した方が、空き家を含む財産管理人の責任を負わなければなりません。新たな相続人が決まるまでのあいだに、特定空き家に指定され、解体命令が出た場合、解体費用を負担するのは財産管理人です。また、財産管理人には、空き家の倒壊や野生動物の住みつきによって近隣住民に被害が生じたときの損害賠償責任も課せられます。
この点もふまえて相続放棄を希望する方は、負債だけでなく財産も受け取れなくなることを十分理解したうえで、弁護士などの専門家に適切な判断を仰ぎましょう。
空き家の解体は自分でもできる?
空き家の所有者などが自分自身で解体工事を行っても、法律上の問題はありません。 解体工事業を営む業者には「建設業許可」や「解体工事業登録」が必須となりますが、個人で空き家を取り壊す場合、これらの許可・登録は不要です。
ただし、業者に依頼するか否かに関わらず、解体工事にはさまざまな届出が義務付けられています。さらに、重機の取り扱いや防音・粉じん対策、アスベストの事前調査など、 解体工事を安全かつ違法性なく進めるには、専門性が求められる場面も少なくありません。
知識や技術に不安があるまま工事を進めることで、必要な手続きを失念したり、産業廃棄物を誤って一般廃棄物で処理してしまったりなど、法令違反を招くリスクも高まります。思わぬ事故や近隣住民への健康被害を回避するためにも、解体工事は専門業者へ依頼したほうがよいでしょう。
まとめ
空き家の解体費用は、木造・鉄骨造・RC造など建物の構造によって相場に差があるほか、立地、規模、付帯工事の有無によっても変動します。想定以上に解体費用がふくらんでしまいそうなときには、ローンや補助金制度の活用も検討してみてください。
なお、古屋付き土地で売却したり、賃貸で運用したりと、解体工事を行わない空き家の処分方法も選択肢になりますが、それぞれデメリットもあります。土地の二次利用が決定している場合や、売却・賃貸運用を考えるには老朽化・損傷が進んでしまっているという場合、解体工事を視野に入れましょう。
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