解体工事には安くない費用がかかることから、技術面でも費用面でも納得できる依頼先の見極めが肝心になります。悪質な解体業者を回避するため、重要な判断材料となるのが、契約前に提示される見積書です。見積もりの内訳から、作業内容と費用の妥当性を確認しておくことで、不適切な作業や予想外の追加費用の発生を避けやすくなるでしょう。
本記事では、解体工事の見積もりの内訳を確認する際のポイント、注意点などを解説します。信頼の置ける解体業者を選ぶための参考にしてみてください。
目次
解体工事の見積もりの内訳
解体工事の見積もりの内訳には、多岐にわたる作業項目が含まれています。見積もりの内訳を構成するのは、主に次のような項目です。
- 仮設工事費
- 解体工事費
- 廃棄物処分費
- 設備撤去費
- 重機回送費
- 整地費
- 届出費用
- その他付帯工事費
それぞれどのような作業に対して発生する費用なのか、詳しく見てみましょう。
仮設工事費
仮設工事費用とは、解体工事を行うための足場や養生シートなどの準備にかかる費用です。作業場所が高さ2メートル以上となる解体現場では、足場の設置が義務付けられます。また、解体工事に伴う近隣への粉じん・騒音の影響を抑えられるよう、養生シートや防音シートの設置も欠かせません。
道路の舗装のひび割れ防止や地盤の悪い道を通行する目的で、敷鉄板を用いなければならないケースもあります。いずれも解体工事を安全に進めるうえで必要な対策であり、これらの準備を徹底した業者を見極めるためにも、見積もりに仮設工事費用が含まれることを確認しましょう。
解体工事費
解体工事費は、住宅などの建物の解体そのものにかかる費用で、見積もり金額の大部分を占めます。その多くは人件費にあたり、解体対象の建物の強度が強く、大規模であるほど費用も上がるのが一般的です。
解体工事費のより詳細な内訳には、次のような項目が挙げられます。
- 内部解体作業費・・・建物内部にあるものを撤去する作業
- 外部解体作業費・・・重機を使って躯体(建物の骨組み)を解体する作業
- 基礎の除去作業費・・・躯体を壊したあとに行う基礎部分の撤去作業
解体工事にかかる費用の相場を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
建物の解体費用の相場|金額が変動する要素と費用を抑える方法を紹介
廃棄物処分費
解体工事で発生した木材や断熱材、コンクリート、屋根などの産業廃棄物は、法律に則って適切に分別し、処分しなければなりません。解体工事の見積もりの内訳には、こうした廃棄物の処理費用も含まれます。
解体対象の規模によっては廃棄物が大量に出るため、解体費用総額のなかでも相当の割合を占める項目となるでしょう。正しく廃棄物を処理する工程は、環境保護の観点だけでなく、違法性なく安全に解体工事を完了させるうえでも重要です。
設備撤去費
設備撤去費は、ガスや電気などのライフラインをつなぐ設備を取り除くための費用です。解体工事が始まる前までに、各ライフラインの契約先へ施主自身で連絡し、停止の依頼を済ませましょう。一部ライフラインは、解体業者ではなく契約先の業者による撤去作業が必要な場合もあるため、どの設備を誰が撤去するのかあらかじめ確認しておいてください。
建物の解体工事にあたって撤去が必要になるライフラインは、以下のとおりです。
- ガス
- 水道(解体業者が工事中に使用する場合もあるため事前に確認する)
- 電気
- 電話
- インターネット
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重機回送費
解体工事では、ショベルカーなどの重機を使用する場合がありますが、すべての重機が公道を走れるわけではありません。必要に応じて、重機を積んで運ぶためのトラックなどを確保しなければならず、その際に重機回送費が発生します。
重機回送費に影響を与えるのは主に、重機の保管場所と工事現場までの距離です。それぞれの場所が離れていると、手間やガソリン代がかかるぶん、重機回送費も高くなります。
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整地費
整地費は、建物を解体したあとの土地を整えるためにかかる費用です。なお、整地作業の範囲や程度は解体業者によって異なります。土地を平らにするだけなのか、砂利を敷き詰めるのか、あるいは芝生を植えるのかなど、作業内容によって整地費の見積もりも変わってくる点に注意しましょう。
土地を平らにするのみの粗整地であれば費用は抑えやすくなりますが、解体工事の目的によっては、作業範囲に不足が出る可能性もあります。更地にしてそのまま売却するのか、新たな建物を建てる予定なのかなど、目的に応じた整地が必要です。工事後の土地の活用目的をふまえて、適切な整地作業が見積もりに反映されているかを確認してみてください。
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届出費用
解体工事の前後にはさまざまな届出が必要になり、業者などにこれらの手続きを依頼・委託するには費用がかかる場合があります。解体工事に伴う主な届出は、以下のとおりです。
- 建設リサイクル法に基づく届出
- 道路の使用許可申請
- アスベストの事前調査
- アスベストの除去届出
法的に義務付けられている届出も存在し、申告内容や書類に不備があったり、提出期限を過ぎてしまったりすると、施主も罰則の対象となりかねません。解体工事の完了まで滞りなく進めるためにも、各種届出とそれに付随する費用も念頭に置いておきましょう。
その他付帯工事費
解体工事の見積もりに含まれる付帯工事費とは、ブロックや物置、庭の植木・石、カーポートなど、建物以外の設備を撤去するための費用のことです。これら付帯工事にかかる費用は、対象物や作業内容によって単価が異なるため、見積書の内訳でも一般的には項目ごとに分けて記載されています。
屋外設備はもちろん、屋内に残された家具や家電の撤去も付帯工事の扱いとなり、料金が加算されるため、一軒家などの解体工事では特に見積もり時点での確認が必要です。
解体工事の見積もりの確認不足で起こり得る失敗
解体工事の見積書の内訳をきちんと確認しなかった場合、必要な作業項目を盛り込まず、費用を安く見せかけている業者だとしても、見抜くことができません。契約後、実際に解体工事へ取り掛かってから、見積書にはなかった追加費用を請求される可能性もあるでしょう。なかには、意図的に不明確な見積書を作成したり、付帯設備の存在に気付きながらも見積もりに撤去費用を含まなかったりと、高額な追加費用の請求を狙う悪徳業者もいます。
こうした業者を見抜き、想定外の出費を防ぐためにも、見積もりの内訳から作業範囲などを確認し、不明点があれば質問しておくことが重要です。
解体工事の見積書を確認する際のポイント・注意点
解体工事の見積書は、優良な業者を選ぶための判断材料に役立てることが可能です。この際、内訳の詳細まで確認できるか、税込み・税抜きどちらで記載されているかなど、いくつかのポイントをおさえておく必要があります。
ここからは、解体工事の見積書を確認する際の3つの注意点を見てみましょう。
詳細が明記されていない見積書には注意する
見積書に作業内容や費用の詳細を明記していない解体業者には、注意が必要です。「解体工事一式〇円」のように見積もりの内訳が記載されていない場合、作業範囲にどこまで含まれるのかが判断できません。結果として、契約後に思わぬ追加費用が上乗せされる恐れもあります。
見積書の内容に疑問点があるときには、解体業者に詳細を確認し、誠意ある回答をもらえないようであれば別の依頼先を検討しましょう。解体工事の見積もりの内訳が適切かどうかを判断するうえで、特に注目したい項目を5つ紹介します。
地中埋設物に関する項目
地中埋設物とは、解体工事を行う現場の地中から見つかる古井戸や浄化槽などのことです。これらの地中埋設物が事前調査で見つかっていれば、見積もりの内訳には撤去費用が含まれます。ただし、地中埋設物は解体工事が始まってから発見されるケースも多く、予定外の追加費用につながりがちです。
よって、解体業者に見積書を出してもらったら、地中埋設物の撤去費用とあわせて、工事中に埋設物が見つかった場合の対応についても明記されていることを確認しましょう。なお、地中埋設物の事前調査にも費用がかかります。
アスベスト除去に関する項目
2022年より、解体工事にあたってはアスベスト含有の事前調査が義務化されました。施主自身では、解体対象の建物がアスベストを含むかどうかを知らないケースも少なくないため、有資格者に事前調査を依頼し、結果をきちんと把握しておきましょう。
アスベスト建材の使用が判明した場合、近隣住民に健康被害を及ぼさないよう、現場を隔離したうえで、慎重に除去作業を行わなければなりません。除去費用は、アスベスト建材の量や使用範囲によって変わります。
想定以上のコストがかかる可能性もあるため、見積もり時点で、アスベスト除去に関する費用が内訳に正しく反映されていることを確認しておくと安心です。また、アスベストの事前調査から除去まで解体業者に一括で依頼できる場合、調査費用も見積もりに含まれます。
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人件費に関する項目
解体工事の見積書を受け取ったら、人件費に関する項目も入念にチェックしましょう。上記でも触れたとおり、人件費は解体総額の大部分を占める項目です。特に、解体対象の建物と隣家の距離が近かったり、現場周辺の道路が狭かったりする場合、手作業がメインになることで手間がかかり、人件費も高くなる傾向にあります。
解体工事を担う作業員をはじめ、トラックの運転手やガードマンなども、人件費が発生する対象です。作業人数はもちろんのこと、作業日数も見積もり金額に影響を与えるため、内訳の詳細にまで目を通してみてください。
これらの人件費が相場からかけ離れていないことを確かめるには、複数社から相見積もりをとり、費用感を比較検討すると良いでしょう。
室内残置物に関する項目
解体工事の見積書には、室内残置物に関する費用項目も明記されている必要があります。解体したい建物の中にエアコンや冷蔵庫などが残っている場合、撤去・処分のための追加費用が発生するためです。
家屋内に残置物があるにも関わらず、見積書に詳細が記載されていないようであれば、解体業者に作業範囲や処理方法を尋ねておくことをおすすめします。残置物の扱いにはさまざまな法律が関係してくるため、違法性のない業者へ依頼するためにも、見積もり時点での確認を重要視しましょう。
産業廃棄物の処分に関する項目
解体工事によって発生した産業廃棄物の処理費用は、業者によって差が出る項目です。運搬費用と処分費用を分けて算出する業者もいれば、運搬トラック1台あたりで計算する業者もいます。
いずれの場合でも、解体業者には分別解体が義務付けられており、廃棄物の品目ごとに分けて運搬・処分しなければなりません。木材やコンクリート、金属など、廃棄物の種類によって処理費用は変わってくるため、見積書でも品目別に内訳を確認できる状態が望ましいでしょう。
見積もりに産業廃棄物に関する費用項目がない場合、不法投棄を行うことで処理費用を抑え、より多くの利益を得ようとする違法業者の恐れもあります。産業廃棄物を扱うための適切な許可を得た業者を選ぶよう徹底するとともに、見積書に目を通す際は、品目ごとの処理費用の記載を確認しましょう。
税金の表記方法を確認する
解体費用が高額になるほど、消費税の負担も大きくなります。解体業者に提示された金額の妥当性を判断するうえで、見積書が税込み表示か否かの確認は欠かせません。
取引金額を安く見せるために、あえて税抜きで見積書を作成する解体業者もいます。税抜き表示での見積書でも法的な問題はありませんが、思い違いによる契約後のトラブルを防ぐためにも、施主側で税金が適切に反映されているかチェックしておきましょう。
複数社から相見積もりをとる
解体工事の依頼を考えたときには、複数社から相見積もりをとるのがベストです。1社の見積もりのみでは、解体費用の相場がわからず、作業範囲が適切かどうかの判断もできません。
費用が高すぎる場合だけでなく、極端に安い場合にも要注意です。あまりに安い見積もりを提示する業者は、事前準備や作業工程で手を抜いていたり、追加費用の請求を前提としていたり、あるいは不法投棄を行っているリスクもあります。思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、複数社に見積もりを依頼し、内訳の詳細さや作業範囲の過不足、費用感などをふまえて信頼できる業者を選ぶことが大切です。
まとめ
解体工事の見積もりを確認する際は、費用総額とともに、仮設工事費や解体工事費、設備撤去費といった内訳にもしっかりと目を通す必要があります。詳細な内訳が明記されていない見積書では、解体業者の作業範囲を把握できず、着工後に想定外の追加費用を請求される恐れもあるためです。
見積書を受け取ったら、適切な作業項目が過不足なく盛り込まれているか、消費税を含めた表示になっているかどうかをチェックしましょう。複数社から相見積もりをとることで、費用相場を把握でき、優良な解体業者を見極めやすくなります。
ケンシン総業は、お客様のご相談を受けてから、現場調査後に即日でお見積もりのご案内が可能です。はじめて解体工事をお考えの方も、安心・納得してご依頼先を決めていただけるよう、ケンシン総業では相見積もりを推奨しております。お客様に最適なプランのご提案はもちろん、お見積もりまで無料でご利用いただけますので、解体工事に関するお悩みはケンシン総業へお気軽にお問い合わせください。