住宅の建て替えや空き家の解体工事を考えたとき、費用面を不安に感じる方もいるでしょう。ただし、解体費用には補助金・助成金を活用できるケースがあり、静岡市にも解体工事に関する補助金制度はいくつか用意されています。これらの制度を適用できる場合、経済的な負担を軽減しやすくなるでしょう。
本記事では、静岡市内の空き家解体工事に使える補助金制度を詳しく解説します。
建物の解体費用の相場|金額が変動する要素と費用を抑える方法を紹介
目次
静岡市の空き家解体に使える補助金一覧
静岡市には、空き家などの解体工事に活用できる補助金制度が複数用意されています。いずれの制度も、安全性の向上や災害に強いまちづくりを目的に運用されており、対象工事となる場合には補助金を受け取ることが可能です。
ここでは、静岡市の空き家解体に関する主な補助金制度を4つピックアップして紹介します。
- 要安全確認計画記載建築物除却事業
- 静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金
- 静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金
- 静岡市住宅・建築物等耐震化促進事業費補助金
それぞれの対象や補助額、注意点などをチェックしてみましょう。
要安全確認計画記載建築物除却事業
要安全確認計画記載建築物除却事業は、災害時の安全確保を目的とした補助金制度です。特定の条件を満たす建築物の解体工事に対して、補助金が支給されます。
制度の概要や申請方法を具体的に見てみましょう。
要安全確認計画記載建築物除却事業とは
要安全確認計画記載建築物除却事業は、要安全確認計画記載建築物の所有者が解体工事を行う際に活用できる補助金制度です。要安全確認計画記載建築物とは、以下に当てはまる建物を指します。
- 都道府県や市区町村が指定する緊急輸送道路などの沿道にある建築物のうち、倒壊した場合に前面道路の半分以上をふさぐ建築物
- 都道府県が指定する病院や庁舎、避難所などの建築物
静岡市では、災害に強い都市を目指すために、これらに該当する建築物の解体工事費用を補助の対象としています。
補助金の対象
同制度の対象となるのは、要安全確認計画記載建築物の解体工事です。静岡市では、静岡県が指定する以下の道路沿いに建つ、1981年5月31日以前に建築工事が始まった建築物のなかで一定の高さを超えるものが該当します。
- 国道1号
- 主要地方道清水停車場線
- 県道入江富士見線
- 主要地方道山脇大谷線
- 市道丸子池田線
- 主要地方道中島南安倍線
- 市道中町長谷通線
- 主要地方道井川湖御幸線
- 県道藤枝静岡線
※2024年3月29日時点
対象建築物の高さは、敷地に接する道路の中心から建築物までの距離を超える高さです。例えば、道路幅が12mのときは、道路境界線から建築物までの距離+6mを超える建築物が対象となります。
要安全確認計画記載建築物の詳細は、静岡市都市局建築部建築指導課が公表しているこちらの資料も参考にしてみてください。
補助額
補助額は、1棟ごとに下記いずれかで少ない額の11/15以内です。
- 解体工事で必要となる経費
- 延べ面積に1平米あたり以下いずれかをかけて算出した金額
- マンション:50,200円
- マンション以外の住宅:34,100円
- 上記以外:51,200円
なお、限度額は4,400万円となっています。
注意事項
補助金の申請手続きは、解体工事を始める前に行う必要があります。解体工事の開始後に申請してしまうと、補助金を受け取れません。
補助金制度を利用したい場合、毎年度、市の建築安全推進課から送付される事業計画書を期限までに提出します。事業計画書を提出しなければ原則、補助金を受け取れないため注意しましょう。
不明な点は、静岡市建築安全推進課安全推進係に問い合わせてみてください。
静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金
静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金は、がけ崩れなど自然災害の影響が及ぶ可能性のある住宅の解体と、安全な場所への移転を支援する制度です。災害リスクの危険性が高い建物の解体工事とともに、より安心して暮らせる住居の確保が補助されます。
制度の申請方法や注意点を見てみましょう。
静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金とは
静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金では、崩落などの危険性が高いがけに隣接した住宅を解体し、安全な場所に新たな住宅を建築・購入する場合、費用が一部補助されます。補助の対象となるのは、危険と判断される区域に移転前の住宅が建っており、以下いずれかに該当するケースです。
- 既存不適格住宅(法律に従って建てられたが、法令の改正や都市計画の変更に伴って不適格な部分が発生してしまった住宅)
- 大規模地震や台風などによって安全面の問題が起き、市長が是正勧告などを行った住宅
危険と判断される区域
静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金の対象となる危険と判断される区域には、以下の4種類があります。
区域 | 概要 |
---|---|
災害危険区域 | 建築基準法に基づき、静岡県知事が津波や高潮などによる著しい危険があると指定した区域 |
がけ条例規制区域内 | 建築基準法に基づき、静岡県建築基準条例第10条(がけ条例)で規制対象となっているがけ崩れなどの災害リスクが高い区域 |
土砂災害特別警戒区域 (レッドゾーン) | 土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂法)に基づき、静岡県知事が土砂災害のリスクが著しく高いと指定した区域 |
土砂災害特別警戒区域に指定 される見込みのある区域 | 土砂災害防止法第4条第1項に規定する基盤調査を実施のうえ、上記の土砂災害特別警戒区域に指定される見込みのある区域 |
安全な移転先の定義
静岡市がけ地付近危険住宅移転事業補助金の補助対象となる安全な移転先とは、擁壁(ようへき)といった安全施設が不要な場所のことを指します。擁壁は、高低差のある土地の斜面が崩れたときに住宅が倒壊しないよう設置される構造物です。
移転先の安全性を自身で判断するのは難しい場合もあるため、あらかじめ静岡市の窓口(都市局建築部住宅政策課住まいまちづくり係)に相談しておくことをおすすめします。
補助金額
同制度を利用する場合、一戸あたりの補助限度額は以下のとおりです。
補助対象 | 対象となる経費 | 補助限度額 |
---|---|---|
危険住宅の解体 | 解体費用 | 975,000円 |
移転先の土地の購入 | 金融機関から受けた融資の利息返済(年利率8.5%が限度) | 2,060,000円 |
移転先の敷地の造成 | 608,000円 | |
移転先の住宅の建築または購入 | 4,650,000円 |
※2024年4月時点
危険住宅の解体費用を対象とするには、原則として住宅すべてを解体する必要があります。また、金融機関からの融資を受けない場合、移転先の土地・住居の購入などにかかる費用は補助対象となりません。
補助金を活用した移転の流れ
静岡市がけ地付近危険住宅移転事業補助金を活用して住居を移転するには、次のような流れで申請を進めましょう。
年 | 月(目安) | 内容 | 実施者 |
---|---|---|---|
解体工事や移転の前年度 | 8月以前 | 事前相談事前審査 | 申請者静岡市 |
9~3月 | 予算要求国・県との協議 | 静岡市→県、国 | |
解体工事や移転を実施する年度 | 4~5月頃 | 補助申請 | 申請者→静岡市 |
交付決定 | 静岡市→申請者 | ||
6月頃~年度内 | 契約から工事完了まで | 申請者 | |
工事完了検査補助金の請求 | 静岡市申請者→静岡市 | ||
補助金の交付 | 静岡市→申請者 |
解体工事や移転を行う前に、静岡市の担当窓口での相談や審査が必要となり、申請後すぐに工事へ取り掛かれるわけではありません。補助申請をし、交付の決定を受けてから、解体業者などと契約を結びましょう。
事前相談から補助金の受け取りまでを滞りなく進めるためには、計画的な準備が重要です。
注意事項
静岡市がけ地付近危険住宅移転事業補助金は、単年度事業のため、危険住宅を解体して新たな住宅へ移転する場合、その年度内に新居を完成させなければなりません。何らかの事情があって住宅の新築や移転に2年以上かかるときには、補助内容や条件が変わるため、事前に相談しておきましょう。
静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金
静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金は、建築物に使用されているアスベストの調査・除去を支援する補助金制度です。制度の主要な2つの支援内容を紹介します。
2つの補助制度の概要
静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金では、吹付け建材にアスベストが含まれているかの分析調査と、吹付けのアスベスト含有建材の除去工事に補助金が支給されます。制度の対象や補助金額は、以下のとおりです。
アスベスト分析調査事業 | アスベスト除却等事業 | |
---|---|---|
対象 | 建築物に使われている吹付け建材にアスベストが含まれていないかの分析・調査 | 建築物に吹き付けられたアスベスト含有建材の除去工事 |
補助金額(限度額) | アスベスト分析調査にかかる費用の金額以内(限度額25万円) | アスベスト除去工事にかかる費用の1/3(限度額60万円) |
対象となる建築物 | 静岡市内のすべての民間建築物 | |
対象となる建材 | ・吹付けアスベスト ・アスベスト含有吹付けロックウール ・吹付けバーミキュライト (ひる石吹付け) ・パーライト吹付け | ・吹付けアスベスト ・アスベスト含有吹付けロックウール |
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2つの制度の必要書類
静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金の申請時には、次のような必要書類の提出が求められます。
アスベスト分析調査事業の補助金申請に必要な書類 | アスベスト除却等事業の補助金申請に必要な書類 |
---|---|
・補助金交付申請書(様式第1号) ・建築物の所有者がわかる書類(登記事項証明書など) ・建築物の建築年月日と用途がわかる書類(確認済証や検査済証など) ・建築物の全体と対象部分の状況を確認できる写真図面(案内図や配置図、各階平面図など) ・アスベスト分析調査の見積書 ・分析者が建築物石綿含有建材調査者であることがわかる書類 | ・補助金交付申請書(様式第2号) ・アスベスト分析調査結果報告書 ・建築物の所有者がわかる書類(登記事項証明書など) ・建築物の建築年月日と用途がわかる書類(確認済証や検査済証など) ・建築物の全体と対象部分の状況を確認できる写真 ・図面(案内図や配置図、各階平面図など) ・アスベスト除去工事の見積書 ・アスベスト除去工事に関する計画書(調査者が押印したもの) ・計画書を策定した人物が建築物石綿含有建材調査者であることがわかる書類 |
いずれの場合も必要書類は多くあるため、抜け漏れのないよう入念にチェックしましょう。補助金交付申請書は、様式1・2ともに静岡市のホームページからダウンロードできます。
注意事項
静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金は、アスベスト分析調査や除去工事に着手する前に申請し、交付決定の通知を受ける必要があります。また、アスベスト分析調査を行えるのは有資格者のみです。建築物石綿含有建材調査者が在籍する分析調査機関などを申請者自身で探し、依頼しなければなりません。
申請の進め方に疑問がある場合には、静岡市建築安全推進課指導係に問い合わせておきましょう。
静岡市住宅・建築物等耐震化促進事業費補助金
静岡市住宅・建築物等耐震化促進事業費補助金のなかでも「ブロック塀等耐震化促進事業」は、空き家の解体工事をする際に活用できる場合があります。ここでは、ブロック塀等耐震化促進事業の詳細や申請時の必要書類などを見てみましょう。
静岡市住宅・建築物等耐震化促進事業費補助金とは
静岡市のブロック塀等耐震化促進事業では、ブロック塀や石塀、れんが塀などの倒壊・転倒リスクを防ぐために、これらの撤去工事を行う所有者に対して補助金が交付されます。空き家の解体工事に伴って、ブロック塀などを撤去するときには、補助金の対象となるかどうか確認してみてください。
なお、撤去工事だけでなく、ブロック塀や石塀、れんが塀などをより安全な塀へ改修する工事にも補助が出る可能性があります。対象となるのは、道路に面している高さ80cm以上のブロック塀などの撤去・改善工事です。
補助内容
静岡市のブロック塀等耐震化促進事業の補助率や限度額の詳細は、以下のとおりです。
ブロック塀等撤去事業 | ブロック塀等改善事業 | |
---|---|---|
対象 | 通学路や避難のための道路もしくは避難地沿いに設置された、地震発生時に倒壊の恐れがあるブロック塀などの撤去 | 緊急輸送路・幹線避難路・避難地沿いのブロック塀などを安全な塀に改善する |
補助率 | 見積金額と基準額のうち、いずれか少ない額の2/3 | 見積金額と基準額のうち、いずれか少ない額の2/3 |
基準額 | 2万円/m | 3万8,400円/m |
限度額 | 10万円 (地域防災計画に定められている避難所の敷地もしくは避難地沿いに設置されたブロック塀などを撤去する場合は上限なし) | 25万円 |
必要書類
静岡市のブロック塀等耐震化促進事業を申請する際は、以下の必要書類をそろえて提出しましょう。
ブロック塀等撤去事業の補助金申請に必要な書類 | ブロック塀等改善事業の補助金申請に必要な書類 |
---|---|
・補助金交付申請書 ・ブロック塀などの撤去工事にかかる費用の見積書の写し ・撤去前の配置図や平面図、立体図 ・撤去前の写真 ・地震によって倒壊や転倒の恐れがあることを確認できる書類 | ・補助金交付申請書(様式第2号) ・ブロック塀などの改善工事にかかる費用の見積書の写し ・改善前の配置図や平面図、立体図 ・改善前の写真 ・設計図書 |
これらの書類は、市の担当窓口へ持参するか郵送での提出が可能です。書類審査には2週間程度を要し、審査完了後に静岡市から郵送書類または電話で連絡があります。
注意事項
工事が終わってからの申請では補助金が出ないため、着手前の段階で計画的に手続きを進めましょう。また、同じ敷地内にある道路沿いのブロック塀などは原則すべて撤去する必要があり、一部分だけ残すことはできません。申請条件を事前にしっかりと把握しておくことが重要です。
静岡市で解体工事の補助金を活用する際の注意点
静岡市の解体工事に活用できる補助金には、いくつかの注意点があります。申請のタイミングによっては、制度のメリットを享受できなくなってしまうことを念頭に置いておきましょう。
補助金制度を効果的に活用し、解体工事をスムーズに進めるための注意点を3つ紹介します。
着工前に申請する
各補助金の注意点でも触れているように、静岡市の補助金制度は着工前の申請が基本となります。工事を始めてしまうと、自治体による調査で解体前の現場の状況を把握できず、補助対象となるのかどうかの判断ができなくなってしまうためです。
解体工事後の申請では、補助金を受け取れない可能性があります。補助金の利用を検討している場合、工事の計画段階で早めに申請手続きを行うようにしましょう。
補助金制度の最新情報を都度チェックする
補助金制度は年度ごとに要件や補助額が変わったり、早くに支給上限へ達して申し込みが締め切られたりするケースがあります。最新情報をチェックしたうえで申請手続きを進めることが大切です。静岡市による補助金制度の最新情報は、市のホームページや窓口で確認できます。
補助金は工事完了後に支給されることを理解しておく
補助金が支給されるのは、基本的に工事完了の届出を行ったあとです。そのため、解体などにかかる費用は施主が一旦全額負担する必要があります。補助金を利用できるからといって費用を確保しないでおくと、いざ支払いのタイミングで工面できず、解体業者とトラブルになる可能性があるため注意しましょう。
まとめ
静岡市では、空き家解体に関連した補助金制度を複数用意しています。代表的なものとして、要安全確認計画記載建築物除却事業、静岡市がけ地近接危険住宅移転事業補助金、静岡市民間建築物吹付けアスベスト対策事業補助金を紹介しました。
また、ブロック塀の撤去・改善工事であれば、静岡市住宅・建築物等耐震化促進事業費補助金のなかでもブロック塀等耐震化促進事業を活用できる場合があります。費用の負担を抑えながら解体工事を円滑に進められるよう、状況や目的に合わせた補助金を活用しましょう。
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