家屋の解体工事を検討する際、疑問を感じやすいのがお祓いの必要性についてです。解体工事のためのお祓いに法的な決まりはなく、必ずしも行わなければいけないわけではありません。
一方で、お祓いの実施は、取り壊す建物への感謝や解体工事の無事を祈るための大切な機会でもあります。お祓いにもいくつかの種類があるため、それぞれの特徴を理解し、自分自身の希望や家族との話し合いをふまえて必要性を判断しましょう。
本記事では、解体工事におけるお祓いの意義や儀式の種類、必要な費用などを解説します。
目次
解体工事の際にお祓いは必要?
解体工事の際のお祓いは、必ずしも必要なわけではありません。お祓い自体に科学的根拠はなく、解体工事にあたって実施が義務付けられているわけでもないため、施主が必要ないと感じるのであれば行わなくてもよいでしょう。また、お祓いは神道の宗教的儀式であり、仏教やキリスト教などを信仰している方の場合には行われないのが一般的です。
一方で、解体工事時のお祓いには、穢れや厄災を祓い去り、建物と土地を清める意味があります。長年暮らしてきた住居が取り壊される際、これまでの感謝を伝え、解体工事の無事を祈るためのお祓いが、自分自身や家族の心に区切りをつけるよい機会となるかもしれません。
お祓いをしないとどうなるのか不安に感じる必要はないものの、解体する住居に関わる家族や親族の意見も聞きながら、話し合いのうえで要否を判断しましょう。
解体工事の際に行うお祓いの種類
解体工事に関連するお祓いには、次のような種類があります。
- 解体清祓
- 魂抜き
- 井戸祓
- 樹木祓
- 地鎮祭
- お性根入れ
各お祓いの概要や必要なお供え物、費用などを把握し、スムーズに解体工事を進められるようにしましょう。
解体清祓
解体清祓は、解体工事を始める前に行われるお祓いであり、「かいたいきよはらい」や「かいたいきよばらい」と読みます。家の神様に対して感謝の気持ちを伝え、安全に工事が完了するよう祈願する儀式です。
解体清祓を実施するタイミング
解体清祓は、基本的に解体工事を始める直前に行われます。日柄はそこまで気にする必要はなく、着工日や参列者のスケジュールを考慮して決めてよいでしょう。もし家族や親族のなかに日柄を気にする方がいれば、その意見を尊重するのも一つの選択肢です。
解体清祓に必要なもの
解体清祓を行う際には、以下のようなものを準備する必要があります。
- 白米(無洗米でも可)
- 日本酒
- 塩
- 水(水道水やミネラルウォーターでも可)
- 野菜や果物(神社による)
- 上記の物を置くテーブル
これらのお供え物は、基本的に依頼主が用意します。何をどのくらい用意すればよいかは、お祓いを行う神社によって異なるため、事前に確認してみてください。
解体清祓を行う場所
解体清祓は、神主が実際に解体現場へ来て、敷地内で行うのが通例です。家に神棚がある場合は、神棚の前に祭壇を設け、そこでお祓いを行うのが望ましいとされています。
神棚がない、あるいは神棚の前にスペースがないときには、家の中心に近い場所で行いましょう。祭壇を設けるため、約2m四方以上の空間を確保する必要があります。
解体清祓の流れ
解体清祓の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 開式の辞
- 修祓の儀(しゅばつのぎ):祓い清める
- 降神の儀:神様を招く
- 献饌の儀(けんせんのぎ):神様に食事を供える
- 祝詞奏上(のりとそうじょう):神主が祝詞を読み上げる
- 清祓いの儀:祓う
- 取毀の儀(とりこぼちのぎ):神様に解体を報告する
- 玉串奉奠(たまぐしほうてん):神様に玉串を捧げて拝礼する
- 撤饌の儀(てっせんのぎ):神様に供えたものを下げる
- 昇神の儀(しょうしのぎ):神様を見送る
- 直会の儀(なおらいのぎ):神様に供えたものを参列者で飲食する
- 閉式の辞
所要時間は30〜60分が目安です。参列者は、神主の指示に従って儀式に参加します。
解体清祓に必要な費用
解体清祓にかかる費用は、5万〜7万円程度が相場です。内訳は以下のようになります。
- 初穂料(神主への謝礼金):2万〜5万円
- 出張費:1万~2万円
- お祓いに必要なものの準備費用:5千〜1万円
お供え物などのお祓いに必要なアイテムを自分で用意するか、神社側で手配してもらうかによっても金額は上下するでしょう。
魂抜き
魂抜き(たましいぬき)とは、仏壇や神棚を移動したり、取り壊したりするときに行う儀式です。仏壇や神棚には魂が宿るという考え方のもと、これらを撤去あるいは移動する前には、魂を抜いて「物」の状態に戻すことが望ましいとされています。
魂抜きの費用相場は、3万〜5万円程度です。
井戸祓
井戸祓(いどばらい)は、敷地内にある井戸を埋めるときに行われるお祓いです。地域や宗派によっては、井戸に水の神様が宿るとされています。井戸を埋める際に行う井戸祓は、長年水を供給してくれた井戸の神様に感謝を伝えるための重要な儀式です。
井戸祓には、解体清祓と同様にお供え物が必要となり、準備物の費用と初穂料を合わせて1万~3万円程度の費用がかかります。
樹木祓
樹木祓(じゅもくばらい)は、敷地内の樹木を伐採するときに行われるお祓いです。樹木に生命力や精霊が宿っていると考える地域では、長年敷地を守ってきた樹木を伐採する際に、これまでの感謝の気持ちを伝えるとともに工事の無事を祈り、樹木祓を行います。
樹木祓にもお供え物が必要です。費用相場は、初穂料とお供え物にかかる費用を合わせて2万〜3万円程度となります。
地鎮祭
地鎮祭(じちんさい)は、解体工事が終わって更地になった土地へ新しい建物を建てる場合に行われるお祓いです。この儀式では、土地を守る神様である氏神様をお招きし、新しい建物を建てる報告をするとともに、安全に工事を進められるように祈願します。
地鎮祭は、新居を取得する場合に比較的多くの方が行っているのが特徴です。初穂料のほか、お供え物や資材、設営・設備レンタル代などを含めて費用相場は6万~15万円程度となるでしょう。
お性根入れ
お性根入れ(おしょうこんいれ)とは、仏壇や神棚に魂を入れる儀式のことです。解体に伴い魂抜きを行った仏壇や神棚を新たな場所へ移す際や、新しい仏壇などを設置する際に行われます。
「開眼法要(かいげんほうよう)」や「魂入れ」とも呼ばれる、仏教で重要視される法要です。お性根入れを行うことで、新しい場所や仏壇、神棚などに神仏の魂が宿り、再び家族を見守ってくれると考えられています。
お性根入れの費用相場は、1万〜3万円程度です。
解体工事の際のお祓いに関するよくある質問
解体工事にあたって、お祓いは誰に依頼すればよいのか、どのような服装で参列すべきか、自分自身で行っても問題はないのかなど、迷う場面も多くあるでしょう。ここでは、解体工事時のお祓いに関するよくある疑問とその回答を紹介します。
解体工事の際のお祓いは誰に頼めばいい?
解体工事のお祓いの依頼先は、神社もしくはお寺となり、それぞれ対応できるお祓いの対象が異なります。次のようなお祓いは、神社に依頼するのが一般的です。
- 解体清祓
- 井戸祓
- 樹木祓
- 神棚の魂抜き・お性根入れ
一方、仏壇の魂抜き・お性根入れはお寺に依頼します。
お祓いの儀式のときの服装は?
お祓いに参列する際の服装に、正式なルールはありません。普段着でも問題ないものの、露出の多い服装やジャージなど、だらしなく見える服装は避けるのが望ましいでしょう。また、お祓いは外で行われるケースも多いため、気候に合わせた服装を選ぶことをおすすめします。
初穂料の渡し方は?
解体工事時のお祓いの依頼先にお礼として納める初穂料は、のし袋に入れて渡す形が一般的であり、封筒の表書きには「御初穂料」や「御礼」「御玉串料」などと記載します。あらかじめ表書きが印刷されているものを選んでも問題ありません。
中袋の表には旧漢字で包んだ金額を記載し、裏側の左下へ氏名住所を書いておきます。袱紗に包んで持参して、渡すタイミングで袱紗から取り出すのがマナーです。
初穂料を渡すタイミングに決まりはありませんが、お祓いが始まる前もしくは最後に渡すとよいでしょう。お祓いの進め方に疑問がある方は、事前に依頼先のお寺や神社に確認しておくと安心です。
お祓いは自分でもできる?
解体工事に際して、お祓いを依頼するのではなく、自分たちでお清めを行うことも可能です。例えば、清酒や米、粗塩を敷地の四隅に撒き、建物に感謝を伝えたり無事に解体工事を終えられるように祈ったりする方法があります。
解体工事のお祓いに決まったやり方はありません。自分自身や家族の気持ちが整理できるのであれば、解体前の家に向かって手を合わせ、お礼を伝えるのみでも十分でしょう。
大切なのは、解体工事に関わる方々に後悔が残らないよう、納得できる方法を選択することです。お祓いに対する考え方は地域によっても異なるため、家族や親族で話し合い、どのような形で進めるのが最善かを検討してみてください。
まとめ
解体工事の際に行うお祓いは、必ずしも必要なものではありません。ただし、長年暮らした住居への感謝や工事の安全を祈る機会として、お祓いを重視する方もいます。解体清祓をはじめ、魂抜きや井戸祓、樹木祓、地鎮祭、お性根入れなどお祓いにもいくつかの種類があるため、費用も考慮したうえで家族と要否を話し合うとよいでしょう。
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