空き家の解体後には「住宅用地特例」が適用されなくなり、固定資産税の負担が増えます。しかし、税負担を避ける目的で空き家を放置し続けてしまうと、劣化による倒壊リスクを高めかねません。解体後に固定資産税はどのように変わるのか、減免するにはどのような対策が効果的なのかを知っておけば、適切なタイミングで空き家の処分を検討しやすくなるでしょう。
本記事では、空き家の解体によって固定資産税が増える仕組みと減免のめざし方を解説します。
目次
空き家を解体すると固定資産税が高くなるって本当?
空き家を解体すると、減税制度が適用されなくなり、固定資産税の負担が増します。固定資産税がどれくらい高くなるのか、減税制度の仕組みとあわせて理解を深めておきましょう。
空き家を解体することで固定資産税が最大6倍になる
空き家の解体工事を行うと、それまで適用されていた住宅用地特例という減税制度の対象から外れ、固定資産税が最大6倍ほどになります。固定資産税は、基準年度1月1日時点で土地や家屋の課税台帳などに登録された価格(固定資産税評価額)に、1.4%を乗じて計算されるのが基本です。この際、居住用の戸建てやアパートには住宅用地特例が適用されています。
画像引用元:固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置│国土交通省
住宅用地特例とは、住宅が建っている土地に適用される減税制度です。2023年度までを予定した制度でしたが、時価や物価の上昇を背景に、2024年度の改正を経て期間が延長され、2027年度末までに新築された住宅が適用対象となりました。
住宅用地特例の期間内であっても、建物の解体後には、制度の適用対象から外れます。例えば、固定資産税評価額が土地に対して1,200万円、建物500万円の合計1,700万円だったとすると、固定資産税は「1,700万円×1/6×1.4%=3万8,080円」です。しかし、空き家になった建物を解体し、特例措置の対象外になった場合、「1,700万円×1.4%=23万8,000円」となり、固定資産税に約20万円の差が生じます。
また、住宅が建っている土地が市街化調整区域内にあるときには、固定資産税に加えて、都市計画税の支払いも必要です。都市計画税とは、都市計画事業や土地区画整理事業に活用される税金で、各市町村に継続して納めなければなりません。
都市計画税も、固定資産税と同様に住宅用地特例の減税対象です。ただし、空き家の解体後は固定資産税と同じように特例対象外となり、課税額が増えます。
解体しなくても固定資産税が高くなることもある
倒壊や衛生面で危険がある特定空き家に指定されると、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、解体を行わなくても固定資産税が引き上げられる可能性があります。特定空き家に指定され、市町村から勧告を受けたあとは、所有者が修繕・撤去などの適切な処理を行わなければなりません。勧告に従わなかった場合、住宅用地特例が解除され、結果として固定資産税が増額します。
2023年12月に同法が改正されたことで、増加傾向にある空き家の対策強化が図られました。空き家を解体せず所有し続ける場合、管理状況には十分な注意が必要です。
空き家の解体に伴う固定資産税を減免する方法
空き家の解体に伴って固定資産税は高くなりますが、以下5つの対策を講じることで、固定資産税をはじめとした経済的な負担を減免できる可能性があります。
- 自治体の補助制度を活用する
- 解体後の土地を公共のための固定資産とする
- 解体後にアパートやマンション建てて賃貸経営をする
- 解体後の土地を駐車場として活用する
- 解体後の土地を農地転用する
それぞれ詳しく見てみましょう。
自治体の補助制度を活用する
空き家解体による費用の負担を軽減するためには、地方自治体が用意している補助金制度を活用するのも一つの手段です。自治体によっては、老朽化した危険な空き家の増加を防ぐべく、空き家解体に関する支援制度を設けています。
下表は、静岡県の浜松市と磐田市で用意されている補助金制度の一例です。
浜松市 | 磐田市 | |
制度 | 浜松市空き家解体補助金 (浜松市空家等除却促進事業費補助金) | 磐田市危険空き家等除却事業費補助金 |
主な要件 | ・1981年5月31日以前に建築された住宅 ・公共事業などの補償対象ではない ・空家等対策特別措置法に基づく命令を受けていない ・敷地全体を更地にする ・更地にした土地に申請者、申請者の配偶者および親族の建築物を建てない | ・空家等対策特別措置法に基づく特定空き家 ・1981年5月31日以前に建築された危険空き家 ・敷地全体を更地にする ・市税を滞納していない |
補助額 | 解体費用の1/3 (最大50万円) | 解体工事の1/2以内 (最大50万円) |
手続きの流れ | 1.自治体窓口への事前 2.相談申請書類の準備 3.申請書の提出 4.審査・交付決定 5.解体工事の実施 6.解体工事の完了報告 7.補助金の交付 |
制度ごとに要件や補助額、必要な手続きなどは異なります。各自治体が発信している最新の情報をあらかじめ確認しておきましょう。
静岡市の空き家解体に使える補助金制度一覧|利用の際の注意点も解説
解体後の土地を公共のための固定資産とする
空き家を解体したあとに残った土地を「公益のために直接専用する固定資産」にできる場合、特例が適用され、固定資産税を減免できる可能性があります。減免基準は市区町村ごとで異なるため、窓口やホームページで情報を確認してみてください。
例えば、静岡県浜松市において、固定資産税の免除対象となる公益のための固定資産には、以下のようなものが挙げられます。
- 児童遊園地
- 健康広場など
- 防災倉庫
- ごみ集積所
- 消防水利施設など
- 公衆用便所
これらの施設でも、有料で使用させるものは免除対象から外れてしまう点に注意しましょう。
解体後にアパートやマンション建てて賃貸経営をする
空き家を解体してから、新たにアパートやマンションなどの集合住宅を建てることで、固定資産税の減免制度である住宅用地特例が適用されます。この特例は、個人の一般住宅のみならず、集合住宅も適用対象です。
固定資産税が1/6減額される小規模住宅用地は、通常なら敷地の200平方メートル以下の部分ですが、集合住宅の場合「戸数×200平方メートル」が小規模住宅用地に該当します。例えば、2戸の集合住宅なら400平方メートル、50戸なら1,000平方メートルまでの範囲が、一般住宅用地として固定資産税の軽減措置を受けられます。土地が広く戸数の多い集合住宅ほど、固定資産税の軽減率が大きくなる仕組みです。
入居者を確保できれば家賃収入も得られるため、解体後の土地活用を考えている方は、賃貸経営を選択肢に加えてみてください。
解体後の土地を駐車場として活用する
住宅や施設に比べると、駐車場は評価額が低く設定される傾向にあるため、空き家解体後の土地を駐車場にできる場合、固定資産税の負担を抑えやすくなります。駐車場には、建物ほど複雑な設備を必要としないためです。
ただし、アスファルトで整地を行ったり、精算機や車止めの設置費用が150万円を超えたりなど、条件次第では固定資産税に加えて償却資産税も課税されます。砂利で仕上げるか、アスファルトで舗装するかなどの駐車場の形態によって、土地の固定資産税が変わることは基本的にありません。一方で、設備費用に課税された結果、全体の納税額は割高になりかねない点を理解しておきましょう。
解体後の土地を農地転用する
空き家解体後の土地を農地に転用すると、固定資産税の減免につながる場合があります。更地と農地では評価額に大きな差があり、一般的には更地のほうが評価額は高めです。固定資産税の負担軽減を重視するのであれば、評価額を下げやすい農地転用を検討してみてください。
ただし、農地のすべてが宅地より固定資産税を安くできるわけではありません。農地の種類や場所によっては、宅地並みの課税がされる可能性もあります。農地にする前に、固定資産税の減免を見込めるかどうか入念に確認しておくことが重要です。
まとめ
空き家を解体すると、住宅用地特例による減税制度が適用されなくなるため、固定資産税の負担額が増します。とはいえ、空き家を解体せず所有し続ける場合でも、管理不全が発覚すれば住宅用地特例を解除される可能性があり、安全面を考えても適切なタイミングで処分するのが賢明です。
空き家の解体に伴う固定資産税の減免をめざすには、公共のための固定資産にする、賃貸経営を行う、土地を駐車場や農地に転用するなど、いくつかの方法が考えられます。いずれの方法にもメリットとデメリットの両面があり、状況次第では思うような結果につながらない可能性もあるでしょう。土地活用を視野に入れつつ解体工事を進める際には、専門知識を持ったプロからアドバイスを受けるのがおすすめです。
ケンシン総業では、経験豊富なスタッフがお客様のご要望を丁寧にお伺いし、最適な解体プランを提案させていただきます。費用面で不安がある、土地活用のために空き家の処分を急ぎたいなど、解体工事のお困りごとは、ケンシン総業へお気軽にご相談ください。