解体工事でよくあるトラブルとは?工程ごとのトラブル事例や、対策方法も紹介

解体工事でよくあるトラブル
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建物の取り壊しを行う解体工事では、作業前から作業中、そして作業後のいずれのステップにもトラブルの種が潜んでいます。近隣住民からの苦情をはじめとして、思わぬ形で解体工事の依頼者である自分自身がトラブルに見舞われることもあるかもしれません。万が一のときの対処法や相談場所を把握しておくとともに、信頼できる業者選びが大切になるでしょう。

本記事では、解体工事の際に起こりうるトラブルと対策、被害が発生した場合の相談先を解説します。

目次

解体工事で起こるトラブルとは

解体工事は、建物を取り壊すという比較的規模の大きな作業であり、騒音や振動、粉塵が発生しやすいことから、近隣住民とのトラブルに発展するケースも珍しくありません。依頼した解体業者によっては作業に不手際があり、周辺の建物・環境に被害を及ぼしてしまう可能性もあります。

解体工事に伴って起こるトラブルを、大きく「解体工事前」「解体工事中」「解体工事後」の3ステップに分けて見てみましょう。

解体工事前に起こるトラブル事例

解体工事では、近隣住民への影響を想定しておく必要があります。あらかじめ近隣住民へ工事を行うことを説明をしておかないと、揉めごとに発展してしまいかねません。また、解体工事の許可を得ていない違法の業者に依頼した場合、急遽工事ができなくなる可能性もあるため注意が必要です。

近隣住民への挨拶や事前説明がされていない

解体工事を始める前に、近隣住民への挨拶や事前説明がなされていないと、苦情などの近隣トラブルに発展する可能性があります。工事では騒音や振動、粉塵などが発生し、近隣住民の日常生活に少なからず影響を与えてしまうためです。事前にこれらの発生について説明し、理解を得ておかなかった場合、ストレスを感じた住民から苦情が寄せられる恐れがあります。

トラブルを防ぐためにも、解体業者と依頼主で近隣住民に挨拶を行い、理解を得ておくようにしましょう。工事期間などを周知する説明会が必要と思われる場合、解体業者にその旨を相談してみてください。

許可を得ていない解体業者に依頼してしまう

解体工事の許可を得ていない解体業者に依頼をしてしまった場合、工事が始められない、または工事が途中でストップする可能性があります。解体工事を行う業者は、「解体工事業者登録」もしくは「建設業許可」を得ていなければなりません。一方で、これらの許可を得ないまま違法な工事を行う業者がいることも確かです。

違法業者は、産業廃棄物処理法をはじめとした法律も遵守していない可能性があり、解体した建物の廃材が不法投棄されてしまう恐れもあります。また、許可・登録の未取得が発覚した場合、行政から業者に対して業務停止命令が下り、工事がストップしてしまうケースも想定されるでしょう。

解体業者が損害賠償保険へ加入していない

解体業者が損害賠償保険に加入していない場合、工事中にトラブルが発生したときに被害者側から多額の損害賠償を請求されても、業者で対応できないケースがあります。解体工事では、近隣の建物の壁や塀を壊してしまったり、植木を倒したりなど、さまざまなトラブルが起こりうるでしょう。このとき損害賠償保険に加入していれば、損害賠償請求を受けても補償を受けられます。

なお、損害賠償保険は解体業者が加入するものであり、工事中に発生した事故に対する責任を依頼主が負うことは基本的にありません。ただし、安全意識の高い解体業者を見極めるためにも、損害賠償保険への加入を前提として依頼先を選定することをおすすめします。

解体工事中に起こるトラブル事例

解体工事中は重機を使用する場面もあり、騒音・振動が発生します。これにより粉塵やほこりが舞うほか、近隣の建物にダメージを与えてしまう、地盤が緩み建物が傾いてしまうといったトラブルにつながるかもしれません。

振動で隣の家の外壁や内壁に被害を与えてしまう

解体工事では、重機やトラックなどの使用によって振動が多く生じます。工事の規模によっては、周辺の土地にも揺れが及び、隣家の外壁・内壁に亀裂が入る、天井が歪むなどのダメージを与えてしまう可能性があるでしょう。

解体工事をする以上、揺れを避けることは難しいため、万が一のときの対応やサポートがしっかりしている業者に依頼してトラブルに備える必要があります。

重機を使うため地盤が緩んで家が傾く

解体工事で地下の基礎部分を解体する場合、地盤沈下のリスクがあります。解体に使用する重機の振動によって地盤が緩むことが主な原因であり、周辺の建物の傾きや倒壊、土砂崩れなどにもつながりかねません。工事前に地盤の状態を確認したうえで、適切な対策をとってくれる経験豊富な解体業者を選ぶようにしてください。

解体業者が時間外の作業をしてしまう

解体工事を実施できる時間帯は、騒音規制法によって定められており、この規制の範囲外で工事による騒音を発生させると行政指導の対象となります。解体したい建物のある区域によって規制時間は異なるほか、法律の範囲内であっても解体業者ごとで作業時間はまちまちです。想定される作業時間をあらかじめ隣人に伝えて理解を得ておき、それ以外の時間では作業をしないよう解体業者にもお願いしましょう。

騒音トラブルを回避するために、通勤や通学の時間帯をなるべく避けて作業してもらうことも重要です。

<参照|騒音規制法

隣の家との公共物を壊してしまう

解体工事中に、隣家のブロック塀や植木などを誤って解体してしまい、トラブルになるケースもあります。依頼主と解体業者のあいだで「解体するもの」「してはいけないもの」の認識をそろえておき、細心の注意を払いながら工事を進めてもらう必要があるでしょう。

万が一、隣家の共有物を解体してしまった場合、損害賠償を求められるのは解体業者です。しかし、損害賠償への対応が遅れた場合、依頼者である自分自身と近隣住民との関係が険悪化する可能性も考えられます。万が一の備えとして、解体業者が損害賠償保険に加入しているかどうかを依頼前に確認しておきましょう。

粉塵やほこりが飛ぶ

解体工事中に発生した粉塵が、隣家の外構設備や洗濯物にかかり、苦情が発生してしまう場合もあります。事前の水撒きや養生シート、防塵シートの活用で、工事現場から粉塵などが極力飛ばないように注意しましょう。できる限りの対策を行ったうえで作業していることを近隣住民に理解してもらえれば、トラブルは防ぎやすくなります。

路上駐車等による通行の妨げ

解体工事で使用するトラックや重機、作業員の車などを付近の道路に駐車すると、通行の妨げとなり、地域住民から苦情が入る事態も想定されます。解体工事が行われることで騒音・粉塵などのストレスが加わるうえに、道路状況も悪いとなると、クレーム発生をはじめとしたトラブルへ発展しがちです。工事完了までスムーズに進めるためにも、解体業者にはコインパーキングや駐車場を利用してもらい、路上駐車がないようにしましょう。

また、喫煙スペースではない場所での喫煙、空き缶のポイ捨てなど、駐車違反以外のマナーにも十分注意します。

複数の建築物がある場合に間違えて解体してしまう

上記でも触れたとおり、工事開始前に解体業者と認識を合わせておかないと、本来壊す予定ではなかったものが解体されるリスクがあります。植木や物置などの外構設備だけでなく、敷地内に建物が複数ある場合には、残しておきたかった建物を解体対象と勘違いされてしまうかもしれません。

解体して処分するものと残しておくものをあらかじめ明確にしておき、契約書へ記載するなど書面で残しておくとよいでしょう。

解体工程が遅延する

解体の工程が滞る原因には、台風や大雨などの悪天候による影響だけでなく、解体業者のスケジュール管理ミスも挙げられます。予定通りに解体が進まなければ、土地の売買や新たな建物の建設ができません。また、工事が長期化することで近隣住民にもストレスがかかり、トラブルに発展しやすくなります。

解体業者都合で工期が遅滞した場合の補償などについて、契約段階で確認しておきましょう。

アスベストの飛散による被害

解体工事にあたっては、アスベスト(石綿)を使用した建物かどうかをチェックしたうえで、使用されている場合には飛散に注意して除去を実施する必要があります。アスベストは、適切に処理しなければ人体へ悪影響を及ぼす恐れのある物質です。近隣住民に不安や被害を与えないよう、アスベストを使用した建物に対しても、適切な対応ができる業者を選んでみてください。

解体工事の依頼先を選定する際には、石綿作業主任者などの資格所有者が在籍しているかどうかを確認しておきましょう。

解体工事後に起こるトラブル事例

解体工事が終わったあとで、思わぬトラブルが発覚する事例もあります。例えば、本来解体する予定ではなかった建物が解体されていた場合、元通りに復元するのは難しく、損害賠償請求などが必要になるでしょう。依頼主である自分自身と解体業者のあいだでのトラブルを防ぐには、工事前の入念な相談・確認が必須といえます。

想定していた解体工事の範囲が違っていた

解体工事後に現場を確認したところ、依頼主が想定していた作業内容や範囲、対象物と実際の状況が異なっているというケースもあるかもしれません。解体を頼んだはずの範囲が着手されていなかった場合には、工事のやり直しが必要になるでしょう。

一方で、手放すつもりのなかった所有物が解体・処分されてしまっていた場合、損害賠償請求を行うなどの対処が選択肢として考えられます。

整地工事がされていない

解体工事は、建物を取り壊して終わりではなく、産業廃棄物の処分や細かなゴミの清掃、そして最終工程である整地作業までが含まれます。整地されていない土地は二次利用ができず、新築物件の建築もできません。悪質な業者によって整地工事がずさんに行われた場合、いざ依頼主が二次利用をしようとしたときに再度整地が必要になり、追加費用が発生してしまいます。

解体業者から工事完了との連絡を受けたら、現地に足を運び、整地まできちんと行われていることを確認しましょう。

無断で追加費用を上乗せされていた

契約段階で依頼主が把握していなかった工事を、解体業者が無断で追加し、そのぶんの費用を上乗せして請求するケースがあります。解体工事を行っていて、地中からブロックや浄化槽などが見つかったときには、地中障害物質の撤去が必要です。一般的には依頼主に確認してから作業追加・費用発生となりますが、なかには依頼主の許可なく作業を行い、あとから高額請求する解体業者も存在します。

追加作業が必要になった際の対応については、事前に認識をすり合わせ、費用に関するトラブルを防ぐためにも契約書で明示しておきましょう。

建物取毀証明書を発行してもらえない

解体工事が完了したにも関わらず、解体業者がなかなか建物取毀証明書(解体証明書)を発行してくれず、手続きが滞ることがあります。建物取毀証明書とは、建築物が取り壊されたことを証明する書類であり、建物滅失登記に必須です。

建物滅失登記は、建物が解体された日から1ヵ月以内に提出しなければならないため、解体業者の対応が遅れているときには催促の連絡をしてみてください。

産業廃棄物を不法投棄される

解体工事によって出た産業廃棄物は、適切な場所へ運搬する必要がありますが、依頼先が悪徳業者であれば不法投棄されてしまう可能性もゼロではありません。悪徳業者によって不法投棄された場合、廃棄物処理法に違反したとして業者が罰則対象となります。一方で、費用を抑えようと業者には解体作業のみを頼み、依頼主の意志で産業廃棄物を放置したといったケースでは、依頼主の罪が問われる可能性があるでしょう。

思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、解体業者から産業廃棄物の処理方法を確認しておくとともに、依頼主側でも正しい対応を徹底する必要があります。

解体工事のトラブルを避ける対策

解体工事を行う際に発生する可能性のあるトラブルは、対策によって防ぐことが可能です。解体業者の選定段階で、必要な許可・登録がきちんとされているか、実績は十分かといったことを確認し、悪徳業者を避けるようにしましょう。

近隣住民への挨拶周りを率先して行う

解体工事におけるトラブル対策として欠かせないのが、近隣住民への挨拶回りです。前もって近隣住民から理解や協力を得ておくことで、トラブルが発生しにくい環境づくりができます。解体工事による騒音や振動が多少あったとしても、事前に丁寧な挨拶をしていれば、苦情を入れるほどではないと考えてもらえるかもしれません。

工事前の挨拶回りは解体業者のみで実施する形が一般的ですが、依頼主から積極的に行うことで、近隣住民との関係を良好に保ちやすくなるでしょう。

依頼する業者の実績や評判をチェックする

解体工事の依頼時は、複数の業者の実績や評判を比較したうえで、信頼できるところを選ぶことが重要です。実績が豊富な業者であれば、作業に慣れており、スムーズかつトラブルなく解体工事を進めてくれる可能性が高いと予想できます。

口コミをはじめとした評判も参考にして、技術面の安心感とともに、隣住民への配慮ができる解体業者かどうかを検討してみてください。

影響が出ると考えられる箇所は事前に写真撮影をする

解体工事による影響が出そうな場所は、あらかじめ写真撮影しておくことをおすすめします。悪質な業者だと、解体箇所の誤りや工事による破損が発生しても、証拠がないとしてトラブルを認めない可能性があるためです。写真に残しておくことで、万が一トラブルが発生したときの証拠となります。

解体工事直前の写真だと判断できるよう、新聞など日付のわかるものと一緒に撮影しておくとなおよいでしょう。

工事協定書を作成し、記録に残す

工事期間や作業時間、車両の進入方法など、解体工事に関わる情報をまとめた工事協定書を作成してもらっておくことも、トラブル予防に役立ちます。工事協定書は、依頼主と隣人、解体業者の三者間で交わした約束を明らかにするための書面です。作成の義務はないものの、着工後「事前に聞いていた話と違う」「自分の要望が無視されている」など意見の食い違いが発生した際に、合意内容を証明してくれます。

家屋調査を入れる

トラブルが発生した場合の備えとして、公平な視点を入れるために当事者以外の第三者へ家屋調査を依頼するのも一案です。例えば、解体した建物に隣接していた物置の壁に亀裂が入っていたとき、それが解体前からあったのか、それとも工事によりできたものなのかをスムーズに判断できます。

依頼主の所有物だけでなく、できれば隣人の住宅についても家屋調査を行っておくと、トラブル発生時に話し合いが難航するのを防げるでしょう。

マニフェストの提出を依頼する

上述したとおり、悪徳業者に依頼してしまうと、解体によって出た産業廃棄物が不法投棄されるリスクがあります。こうしたリスクを回避するには、解体業者にマニフェスト伝票を作成してもらう対策が有効です。

マニフェスト伝票は、解体業者が産業廃棄物の処理を委託する場合に発行する伝票です。産業廃棄物の種類や量、最終処分場所などが記載されており、適切に廃棄物が処理されるまでの流れを確認できます。依頼主へのマニフェスト伝票の提出は義務ではないものの、伝票を受け取りたい旨を伝えれば、優良な解体業者は快く了承してくれるはずです。

建設業許可か解体工事業登録の有無を確認する

解体工事を行う業者は、建設業許可や解体工事業登録が必須となるため、契約前に許可・登録の有無を必ず確認しておきます。解体工事登録の場合、請負金額500万円(税込)未満の解体工事に限られ、それ以上の金額なら建設業許可を取得した業者でなければいけません。

適切な許可・登録を受けていない業者による不法な解体に同意したとして、思わぬトラブルに巻き込まれないよう、依頼先の選定は慎重に行いましょう。

解体工事トラブルの被害にあった場合の相談先

解体工事によるトラブルの被害にあった場合、主な相談先として以下4つが挙げられます。

  • 消費者センター
  • 弁護士
  • 法テラス
  • 相手が違法な業者の場合は役所に通報

無料で話を聞いてもらえる相談先のほか、明らかに悪質な業者の場合には役所への通報も視野に入れてみてください。

消費者センター

消費生活センターの窓口は無料で利用できるため、解体工事のトラブルが発生したときには、まず相談してみてもよいでしょう。足を運べる距離に消費生活センターがない場合、通話料金は発生しますが、ホットラインを活用するのも一つの手です。

消費生活センターは、購入した商品やサービスに関する相談に乗っており、解体工事によって発生したトラブルにも対応しています。費用をかけて弁護士に依頼する前に一度話を聞いてもらい、解決が難しそうな場合は別の相談先を検討してみましょう。

弁護士

解体工事トラブルの当事者で問題を解決できそうにない場合、法律の専門家である弁護士へ相談するという手段もあります。この際、実績や経歴を確認したうえで、建設業界に強い弁護士に依頼するのがポイントです。同じようなケースを多く扱ってきた弁護士であれば、専門性の高い法的知識を活かして問題解決へと導いてくれるでしょう。

法テラス

解体工事のトラブルは、法テラスに相談するという選択肢もあります。法テラスは、総務省が管轄している法的トラブル解決支援のための案内所であり、無料で利用が可能です。弁護士のように、問題解決まで具体的なサポートをしてくれるわけではありませんが、トラブル内容を整理して、どこに相談するのが最適なのか助言をもらえます。

適切な相談窓口がわからないときには、まず法テラスに話を聞いてもらい、状況に合わせた窓口を案内してもらうとよいでしょう。

相手が違法な業者の場合は役所に通報

解体業者が必要な許可・登録を取得していない、産業廃棄物の処理方法が不適切など、違法性がある場合には役所への通報を検討してください。例えば、マニフェスト伝票が捏造されている場合(筆跡がすべて同じなど)、役所の環境課や廃棄物対策課などが主な相談窓口となります。

もし違法業者だと知らずに解体を依頼してしまったとしても、依頼主が罪に問われることはありません。業者に直接話をしても取り合ってもらえない可能性があるため、役所に相談して行政指導を待ってもよいでしょう。

まとめ

解体工事では重機を使用するため、少なからず騒音や揺れ、粉塵が発生し、近隣住民とのトラブルに発展するケースがあります。また、解体業者との認識のすれ違いや違法業者に依頼をしてしまった場合などは、依頼主である自分自身も被害者となりうるでしょう。

こうしたトラブルを避けるためには、信頼できる解体業者を選ぶとともに、あらかじめ近隣住民への挨拶・事前説明をしっかりと行うことが肝心といえます。また、解体工事中・工事後に思わぬ形でトラブルが起きる可能性を想定し、写真や工事協定書などで記録を残しておくのも有効です。

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