解体工事にかかる費用は、建物の構造や規模、立地などさまざまな要素に左右されます。解体作業そのものの費用に加えて、調査・付帯工事の費用がプラスされることも珍しくありません。
経済的な負担をできる限り抑えながら解体工事を行うには、いくつかのポイントがあります。また、安くない費用がかかることをふまえて、相場や金額を左右する要素を知っておき、適切な解体業者を選ぶことも重要です。
本記事では、解体費用の相場や金額に影響する主な要素、費用を抑えるためのポイントなどを解説します。
目次
解体費用の相場
解体工事にかかる費用は、建物の構造や規模に大きく影響されます。木造・鉄骨造・コンクリート造それぞれの建物における1坪あたりの解体費用の相場は、次のとおりです。
建物の構造 | 1坪あたりの解体費用の相場 |
---|---|
木造 | 3万~5万円 |
鉄骨造 | 3万~7万円 |
コンクリート造 | 4万~8万円 |
丈夫な建材や構造体を使用した物件であるほど、解体費用は高くなるのが一般的です。ただし、上記はあくまでも一つの目安であり、実際の解体費用はさまざまな要素によって変動します。建物が広かったり作業環境に制限があったりする場合、解体工事に手間がかかり、費用も高くなる可能性があるでしょう。
また、階層の多さや地下室の有無なども、費用を左右するポイントです。こうした複数の条件が組み合わさって、最終的な解体費用が決まります。
建物の解体費用の決まり方
解体費用を決定する主な要素として、以下4項目が挙げられます。
- 建物の構造
- 立地条件
- 廃材の量
- 壁材・床材の材質
それぞれ費用へどのように影響するのか、詳しく見ていきましょう。
建物の構造
建物の構造によって、解体費用は大きく違ってきます。基本的には、木造より鉄骨造やコンクリート造の建物のほうが頑丈で、壊すのに時間がかかるほか、特別な重機が必要になるため費用も高くなりやすい傾向です。
また、坪数が同じ建物だと、2階建てより平屋の解体費用のほうが高くなりやすいという特徴があります。同じ坪数の場合、2階建てと比較して平屋のほうが屋根・基礎部分の面積が大きくなるためです。
例えば、50坪の2階建てなら屋根・基礎部分は単純計算で25坪であるのに対し、50坪の平屋では坪数分の屋根・基礎部分が存在します。屋根・基礎部分の面積が多ければ、処分費用が高くなりやすい瓦やコンクリートの量が増え、作業コストも大きくなりがちです。
立地
解体対象の建物がどのような場所に建てられているかによっても、費用は大きく異なります。例えば以下のような立地条件では、重機の搬入が難しく、手作業での解体を余儀なくされることで、人件費がかさむ可能性があるでしょう。
- 住宅が密集している
- 現場までの道幅が狭い
- 近くの道路と現場のあいだに高低差がある
- 階段の先に現場がある
住宅が密集していて隣家との距離が近い場合、周囲に被害が出ないよう慎重に作業を進める必要があり、工期が延びるぶん解体費用も相場より高くなりやすいといえます。さらに、人通りや交通量が多くガードマンの設置が求められるケースなども、解体費用が高くなる一つの要因です。
廃材の量
解体費用は、工事で発生した木材・金属廃材の量によっても変わります。解体工事で発生した廃材は、建設リサイクル法に則って分別・再資源化しなければなりません。
廃材の分別作業には手間がかかり、量が多くなるほど人件費もかかります。当然ながら廃材の運搬・処分にも費用が発生するため、廃材の量と解体費用は基本的に比例すると考えて良いでしょう。
壁材・床材の材質
壁材や床材の材質も、解体費用と無関係ではありません。特に、アスベストが含まれている建物の場合には注意が必要です。アスベスト含有建材の使用は、現在全面禁止となっていますが、古い家屋などでは屋根、外壁、断熱材などに使用されている可能性もあります。
アスベストは、繊維を吸い込むことで人体に健康被害を及ぼすリスクのある物質です。もし解体対象の建物にアスベスト建材が見つかった場合、適切な手順で除去を行う必要があります。危険レベルが高いものだと、手作業が基本となり、さらに粉じん飛散防止のための養生や水・薬液の散布も欠かせません。
このように、使用建材によっては作業コストを増やさざるを得ず、想定外の費用が発生してしまうでしょう。そのほか地盤改良の必要性があったり、地中埋設物の撤去が発生したりなど、建物解体後の土地に何らかの問題が見つかった場合にも、別途費用がかかります。
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【パターン別】解体費用の相場目安
冒頭でも触れたとおり、1坪あたりの解体費用相場は木造で3万~5万円、鉄骨造3万~7万円、コンクリート造4万~8万円です。これをふまえて、実際に解体したい建物の工事費用を概算してみましょう。
下表は、建物の構造別に30坪・50坪・100坪の解体費用の目安をまとめたものです。
30坪の建物 | 50坪の建物 | 100坪の建物 | |
---|---|---|---|
木造 | 90万~150万円 | 150万~250万円 | 300万~500万円 |
鉄骨造 | 90万~210万円 | 150万~350万円 | 300万~700万円 |
コンクリート造 | 120万~240万円 | 200万~400万円 | 400万~800万円 |
建物の大きさや立地、建材の種類、廃材の量、さらに付帯工事の有無などによって相場から離れるケースもあるため、より正確な費用は解体業者へ確認してみてください。
解体費用を抑えるポイント
解体費用に影響を与える建物の構造・立地といった条件を変えることはできませんが、いくつかのポイントをおさえておくことで、経済的な負担は抑えやすくなります。ここからは、解体費用をできる限り抑えるための具体的なポイントを4つ見てみましょう。
解体前に片づけをする
解体工事が始まる前に、建物内を極力片づけておくと、解体業者による処分の手間をカットでき、費用を抑えやすくなります。家庭から出るゴミは通常なら一般廃棄物に該当しますが、解体業者に処分を依頼する場合は産業廃棄物として扱われ、別途費用が発生する可能性があるためです。不用品は事前にリサイクルショップで売る、粗大ゴミとして捨てるなど、できる範囲の片づけを済ませておけば、処分費用が割高になるのを回避できます。
また、解体を開始するには、建物の周りに生えている庭木や雑草の除去も必要です。施主自身であらかじめ庭木や雑草まで取り除いておけば、解体業者がスムーズに工事を開始でき、費用の削減をめざしやすくなります。
助成金を活用する
自治体によっては、解体工事にかかる費用のほか、アスベスト調査・除去費用などに助成金や補助金を活用できる場合があります。制度の有無や支給条件、金額、手続きの流れは各自治体で異なるため、事前に解体業者や自治体の窓口で確認しておくと安心です。
例えば静岡県には、災害危険区域に建つ建物の解体工事費用が一部補助される「がけ地近接危険住宅移転事業補助金」などの制度があります。解体工事では想定外の費用がかかるケースも少なくないため、助成金や補助金を上手に利用して負担を抑えましょう。
ローンを活用する
建物の解体費用をすぐに用意できないときは、ローンを活用するのも一つの方法です。解体工事に活用できるローンは、大きく以下の4種類に分けられます。
ローンの種類 | 概要 |
---|---|
住宅ローン | 基本的に建て替えを伴う解体工事に活用できる |
空き家解体ローン | 現在居住していない空き家の解体工事に活用できる |
プロパーローン フリーローン | 用途が限定されておらず多目的に活用できる |
それぞれ金利や申込条件が異なるため、自分自身の状況と返済計画に合わせて適切なものを選びましょう。
複数の解体業者から見積もりをとる
解体費用を抑えるには、複数の解体業者に問い合わせたうえで見積もりを比較し、納得できる依頼先を見つけることも重要です。例えば、どこのエリアの解体業者に依頼するのかによっても費用は変わってきます。解体現場から業者の拠点までの距離があまりに遠いと、出張料金が割高になってしまうためです。
また、複数業者から見積もりをとることで、解体予定の建物に応じた費用相場がいくらなのかを把握できます。相場がわかると、安すぎる・高すぎるなど怪しい業者の見分けもつきやすくなるでしょう。
見積もり金額が平均より高すぎる場合はもちろんのこと、安すぎる場合にも、不法投棄や高額な追加料金の請求を行う悪質な解体業者のリスクがあります。費用面とともに、問い合わせ時の対応やサービス内容。実績なども吟味したうえで適切な業者の見極めが必要です。
まとめ
解体費用の相場は、建物の構造・規模・立地条件などさまざまな要素によって変動します。大体の費用感を理解していることで、悪質な解体業者を回避するための一つの指標となりますが、実際の金額は個々の状況で変わってくる点を理解しておきましょう。
解体費用をできる限り抑えるには、工事前に不用品を処分しておく、助成金・補助金を活用する、複数業者からの見積もりをとるなどのテクニックが考えられます。これらは費用を抑えるためだけでなく、解体工事をスムーズに進めるためにも有効です。
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