解体工事は、その建物の所有者などが自分で行うこともできます。営利目的の解体工事でない場合、解体工事業者登録などは必須要件とならないためです。
一方で、建物の解体時にはさまざまな届出・許可が義務付けられており、少なからず手間がかかります。また、適切に作業を進めなければ建物が倒壊し、自分自身が怪我を負うだけでなく、近隣住民にも危険が及ぶかもしれません。思わぬトラブルを防ぐためにも、解体工事の適切な進め方や注意点を理解しておき、自分で対応ができそうか判断しましょう。
本記事では、家の解体を自分で行う手順や必要な手続き、注意点などを解説します。
目次
家の解体は自分でできる?
空き家を取り壊したい、住宅のリフォームにあたって基礎以外の部分を壊したいというとき、自分で解体作業を行うことも可能です。解体工事業を営む業者の場合、都道府県知事から解体工事業者登録などの許可を得なければなりません。しかし、家の所有者などが自分で解体工事を行うときには利益が発生しないため、これらの資格は基本的に不要です。
とはいえ、解体工事にはさまざまな手続きが発生し、個人で対応するには手間と時間がかかります。適切な手順で作業を行わなければ、怪我や事故などにつながる可能性もあるでしょう。リスクもふまえて、自分で解体工事を行えるかどうか慎重に検討してみてください。
自分で家を解体するときに必要な手続き
個人で家を解体する場合、通常なら解体業者が済ませてくれる手続きも、自分自身で進める必要があります。解体前から解体中、解体後まで、それぞれのステップで必要になる手続きを詳しく見てみましょう。
解体前
解体工事を自分で行うために必須の資格はないと上述しましたが、実際に工事を開始する前には、特定の許可・届出が義務付けられています。いきなり建物を取り壊すのではなく、必要な手続きを漏れなく進めながら、近隣住民への挨拶回りもきちんと済ませておくことが大切です。
道路使用許可を取得する
解体現場となる敷地に十分なスペースがない場合、重機やトラックなどを道路に停める形になるため、あらかじめ道路使用許可を取得しておきましょう。たとえ一時的に駐車するだけだとしても、住民の通行の妨げになる可能性があるため、道路使用許可の取得は必須です。許可証の交付までに1週間ほどかかることも想定して、早めに手続きを済ませておいてください。
許可申請にかかる手数料は都道府県によって異なりますが、一件あたり2,500円程度です。必要書類をそろえて、管轄地域の警察署に提出しましょう。
工事7日前までに建設リサイクル法の届出を行う
解体する建物の床面積が80平米を超える場合、建設リサイクル法に従って、工事7日前までに都道府県への届出が必要になります。届出書のほか、工程表や工事現場の案内図といった添付資料を準備して、地域の建設リサイクル法届出窓口へ提出しましょう。
その他、建築物除却届など自治体に対する届出も必要となるため、該当地域の公式ホームページで事前に情報を確認しておくとスムーズです。
ライフラインを停止する
ガスや電気などのライフラインを止めないまま解体工事を開始した場合、思わぬ事故につながりかねません。安全のためにも、電気・ガス・インターネットは必ず停止しておきます。
ただし、水道については、解体工事の際に粉じんの飛散防止や掃除に使用するため、工事が終了してから停止する形でも良いでしょう。
近隣住民への説明と挨拶を行う
解体工事を行う旨を近隣住民にあらかじめ説明して、理解を得ておく必要があります。解体工事では騒音や振動が発生するため、説明なしに作業を始めてしまった場合、近隣トラブルに発展する可能性があるでしょう。
挨拶回りの際には、工事の期間や作業時間、土日・祝日も作業するのかなどの詳細を丁寧に説明し、迷惑をかけてしまうことに対する謝罪の気持ちも伝えておきます。
重機や車両を確保する
解体のために重機やトラックなどの車両が必要であれば、レンタルで確保します。ただし、重機や運搬車両を操縦するためには、専用の免許を取得していなければなりません。
すでに大型特殊免許などを持っている方であれば、比較的スムーズに重機免許も取得できるでしょう。ただし、免許取得のための技能講習には受講費用がかかります。
廃材置き場や駐車スペースを確保する
建物の解体では多くのゴミが出るため、廃材置き場として十分なスペースを用意しておいてください。また、道路使用許可を受けたとしても、現場周辺の道路が狭く交通の妨げとなりそうな場合には、駐車スペースを別で準備することになります。
解体工事当日の動線もふまえて廃材置き場や駐車スペースを確保し、スムーズに作業を進められるようにしましょう。
アスベストの事前調査を行う
2020年の法改正により、解体工事を行う建物の事前調査が義務化されました。事前調査を行えるのは、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者のみです。また、解体工事を行う建物が一定規模以上の場合、労働基準監督署に対する事前調査結果の報告が必要になります。
アスベストは健康被害のリスクが高い有害物質ですが、国内で使用が全面禁止された2006年以前には、多くの建物の建材に使われていました。事前調査によってアスベストの含有が認められた建物の解体では、ばく露・飛散を防ぐための対策を講じなければなりません。
アスベスト除去を伴う解体工事では、作業場の隔離や養生、薬液による湿潤化などの高い専門性が求められるため、適切な資格・許可を取得した業者に依頼しましょう。
>>解体する建物にアスベスト(石綿)が含まれていたら?危険性や注意するポイントを解説
廃棄物の処理方法を確認する
解体工事では、大量の廃棄物が発生します。コンクリートガラや木片、鉄くず、ガラスなど、廃棄物の種類ごとに分別し、適切に処分することは自主施工者の義務です。各廃棄物の処理方法は自治体によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
ただし、廃棄物の種類は多くあるため、専門業者に依頼して正しく処理してもらうことをおすすめします。
解体中
必要な手続きや準備を済ませたら、いよいよ建物の解体に取りかかります。粉じん・騒音対策のために、工事中は散水や養生を徹底しましょう。散水や養生を怠った場合、周辺にホコリとチリが大量に飛散し、近隣住民などに被害を及ぼす可能性があるためです。
特別な薬剤を使わずに行う散水でも、粉じんの抑制効果は期待できます。
解体後
解体工事が終わったあとにも、忘れてはならない手続きがいくつかあります。工事に協力してくれた近隣住民への挨拶も欠かさないようにしましょう。
建物滅失登記を行う
解体工事が完了してから1ヵ月以内に、建物滅失登記を行う必要があります。建物滅失登記は、解体などによって建物がなくなったときに法務局へ申請する手続きです。
建物滅失登記を行わないと、登記情報が残ったままの状態になり、新たな建物の建築・土地の売買などが許可されない可能性があります。自分自身で申請手続きを行うほか、難しければ司法書士や土地家屋調査士に代行してもらうことも可能です。
なお、登記されていない建物を解体した場合には、都道府県に対して家屋取り壊し届を提出しましょう。登記が済んでいる建物であれば、家屋取り壊し届は基本的に必要なく、建物滅失登記のみで問題ありません。
マニフェスト伝票を回収する
自分で解体工事を行ったときに出た廃材などは、一般廃棄物となる場合が多いものの、自治体によっては産業廃棄物として扱われるケースもあります。産業廃棄物は、廃棄物処理法や廃棄物処理法施行規則といったルールに従って処理しなければならないため、回収業者に依頼したほうが良いでしょう。
その際、産業廃棄物の処理を委託した業者に交付するのが、マニフェスト伝票です。産業廃棄物が適切に処理されたら、マニフェスト伝票を回収して保管する必要があります。
近隣へのお礼の挨拶をする
解体工事が無事終わったことを近隣住民に知らせるとともに、理解・協力に対するお礼を伝えて回りましょう。粉じんや騒音に極力配慮したとしても、解体工事の期間中は近隣住民に迷惑をかける場面が少なからずあるためです。
解体工事の前後に挨拶を行うことで、その後の関係も良好に保ちやすくなります。
自分で家を解体する流れ
建物の解体工事を自分で行う場合、次のような流れで作業を進めていきます。
- 養生シートや足場を用意する
- 建物内部を片付けて、内装材をハンマーで解体する
- 窓ガラスや屋根材を取り除く
- 柱や梁などを解体する
- 基礎を撤去する
- 地面を整地する
- 廃材を処理する
解体に使う器具や重機の準備はもちろんのこと、ヘルメット、安全靴などの保護具の装着も忘れないようにしましょう。
自分で家を解体するときの費用
自分で家を解体工事するときには、主に以下5つの項目で費用が発生します。
- 届出にかかる費用
- 事前準備費用
- 廃棄物の処分費用
- 重機の講習や免許取得費用
- 重機やトラックのレンタル費用
具体的な費用の内訳を順に見てみましょう。
届出にかかる費用
解体工事にあたって必要な届出のなかには、費用がかかるものも一部あります。
道路使用許可申請 | ・2,500円前後 |
アスベストの事前調査 | ・2~5万円程度 |
アスベストの詳細な分析調査 | ・3万~15万円程度 |
建物滅失登記 | ・登録免許税は無料 ・資料取得600円(オンラインは500円) ・専門家に依頼する場合4万円~ |
これらのほか、必要書類の用意や申請を行うための交通費、オンラインで手続きをした際には通信費がかかることも念頭に置いておいてください。
事前準備費用
解体工事に取りかかるための事前準備費用は、工事の規模や準備物の内容にもよりますが、15万~20万円程度は見ておく必要があります。養生や足場、粉じん・騒音防止のためのシートなどのほか、足場を組むときにはそのための資材費用も調達しなければなりません。
廃棄物の処分費用
解体工事によって出た廃材などの廃棄物を捨てるには、処分費用がかかります。処分費用は廃棄物の品目によって異なるほか、自治体によってもまちまちです。事前に自治体のホームページで確認しておきましょう。
重機の講習や免許取得費用
重機を自分で扱うためには、講習を受けて免許を取得する必要があります。解体工事で主に使用される重機3種類とそれぞれの免許取得費用は、以下のとおりです。
- 車両系建設機械の運転免許・・・10万円前後
- 小型移動式クレーンの運転免許・・・5万円前後
- トラックの運転免許・・・15万~40万円程度
重機やトラックのレンタル費用
重機やトラックを持っていない場合、レンタル費用もかかります。レンタルする重機やトラックが大型になるほど、費用も高くなるのが一般的です。地域によっても相場は異なります。
以下は、解体工事に利用される重機のレンタル費用の一例です。
- 小型のショベルカー・・・1日6,000円~
- 5トンのトラッククレーン・・・1日3万5,000円~
- 2トン車のトラック・・・1日2万円~
自分で家を解体するときの注意点
自分が行った解体工事が引き金となって事故などのトラブルが起きたとしても、業者による補償はありません。すべて自己責任となることを前提に、適切に作業を進められるよう、解体工事に関係する条例や法令も知っておく必要があるでしょう。
ここからは、自分で家を解体するときの注意点を3つ解説します。
すべて自己責任となる
個人で解体工事を行う場合、すべてが自己責任となります。高所での作業中に誤って転落し、怪我を負ったとしても、誰かが責任をとってくれるわけではありません。
解体工事では破壊器具や重機の取り扱い、高所での作業も発生するため、事故のリスクと常に隣り合わせです。さらに、近隣住宅のものを誤って傷つけてしまったり、粉じんや騒音に対する苦情が届いたりなど、近隣トラブルの発生時も自分自身で対応することになります。
無意識に条例や法令違反をしてしまうリスクがある
家の解体工事は、気軽にできるDIYなどとは異なり、法令や条例を遵守したうえで進めることが大切です。これらのルールを十分に理解しないまま解体工事を行った場合、知らず知らずのうちに法令や条例に違反し、罰則の対象となる可能性もあります。
例えば、産業廃棄物を誤って一般廃棄物として処理してしまうケースや、必要な届出が漏れていたケースなどが考えられるでしょう。さらに、アスベストの事前調査が不十分で適切な処理を行えなかった場合、自分自身だけでなく、近隣住民にも健康被害を及ぼす恐れがあります。
こうしたリスクをふまえて、自分に適切な解体ができるかどうかを慎重に考えてみてください。
途中から業者に依頼すると余計に費用がかかる可能性がある
自分で解体工事を始めたものの、やむを得ない事情で作業を続けられなくなり、途中から解体業者への依頼を考えることもあるでしょう。ただし、業者に引き継ぐときの現場の状況によっては、想定より多くの費用がかかるかもしれません。
解体工事を行うにあたっては、事前調査の依頼や重機の確保、養生・足場の準備など、多くの手間と費用が発生します。そのうえで、思うように作業が進まず途中で業者に引き継いでもらうとなると、準備費用に加えて依頼費用の支払いも必要です。
解体工事を最後まで適切に進められるか不安な場合には、「はじめから業者へ依頼する」という選択肢も持っておきましょう。
安全に解体を進めるなら業者への依頼がおすすめ
家の解体そのものに必須の資格はなく、自分で工事を行うことも可能です。しかし、近隣住民への挨拶回りや粉じん・騒音対策、重機を使った作業、廃棄物の処理など、すべてを自分一人で進めるのは時間的にも体力的にも負担になります。
また、解体工事には専門的な知識や技術が必要となるため、安全面でも不安が残るでしょう。トラブルなく安全に解体工事を進めたいという方は、信頼できる解体業者への依頼をおすすめします。
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