建物の解体工事を依頼する際、工期や費用を極力抑えるために、基礎の撤去は行わず、残したままにしたいと考える方もいるでしょう。しかし、基礎を残した状態で解体工事を終えることは基本的に認められません。違法性なくスムーズに解体工事を完了できるよう、基礎残しのリスクと、撤去が必須とならない例外的なケースを正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、解体工事で基礎残しが認められない理由とともに、建物の基礎の種類や解体方法、費用の目安など、着工前に知っておきたい知識を解説します。
基礎を残して解体工事するのは違法?
基礎部分を残したまま解体工事を完了させるのは、違法行為にあたる可能性があります。基礎は、建物を支える土台として欠かせない要素です。しかし、建物の上部が撤去されたあとに残った基礎は単なる瓦礫で、産業廃棄物の扱いになります。
地中に基礎が残った状態だと、土壌や地下水など近隣環境に悪影響を与えかねません。このため廃棄物処理法で、建物の解体工事にあたっては基礎の撤去も行い、産業廃棄物として適切に処理するよう義務付けられています。
解体工事を依頼した土地の所有者であっても、基礎の放置は不法投棄と見なされる恐れがあるため、注意が必要です。
解体工事で基礎を残すケース
解体工事では、基礎部分の撤去も原則必須となりますが、基礎を有価物に加工できる場合、例外的に残しても問題ありません。例えば、解体工事後の土地を駐車場にすることが決定しており、破砕機で基礎を粉砕し、埋め立て用の骨材に活用できるケースなどです。こうした正当な理由があれば、基礎を有価物で残せる可能性があります。
ただし、有価物か産業廃棄物かの線引きは、都道府県をはじめ行政の判断にゆだねられており、解体工事の施主が個人で決定できるわけではありません。更地にせず基礎を残したい場合には、有価物での再利用について行政の窓口などへ事前に相談しておきましょう。
解体工事の際に知っておきたい基礎の種類
基礎の再利用は考えておらず、建物の解体工事と同時に撤去する場合、基礎がどのような造りなのかを把握しておくと、工期や費用の見当をつけやすくなります。基礎の種類によって、解体の進め方が変わってくるためです。
基礎は大きく「杭基礎」と「直接基礎」の2種類に分けられます。
杭基礎
杭基礎は、地中に杭を打ち込んで建物を支える造りです。
建物と地盤の状況に合わせて、杭基礎のなかでも「支持杭」と「摩擦杭」のどちらかが採用されます。支持抗と摩擦抗の違いは、以下のとおりです。
【支持杭】
- 支持層となる固い地盤まで杭を打ち込んで、建物を支える
- マンションやビルなど高重量な建物によく利用される
【摩擦杭】
- 杭と地盤の摩擦力を利用して建物を支える
- 杭基礎の支持層が安定していない、あるいは支持層が深い場合に用いられる
直接基礎
直接基礎とは、地盤に直接基礎を設置する手法を指し、「独立基礎」「布基礎」「ベタ基礎」の3種類に分類できます。それぞれの特徴を見てみましょう。
独立基礎
独立基礎は、建物の主要な柱の下に単独で基礎を設置する造りです。
基礎の底部分が広がった四角錘のような形状になっていることから、独立フーチング基礎とも呼ばれます。地盤の強度が高い場合に適した基礎ですが、人が居住するための家屋ではあまり採用されません。主に倉庫や店舗、工場などの比較的大きな建物に用いられています。
布基礎
布基礎は、建物の壁や主要な柱へ沿うように、逆T字型のコンクリートを打って設置する基礎です。
基礎に接していない建物の底面部分には、コンクリートの薄い層である「防湿コンクリート」を打ち込むのが一般的ですが、防湿コンクリート自体に建物を支える力はありません。このため、ほかの基礎に比べると耐久性や安定性は劣る傾向にあります。
特に、湿気に弱い木造住宅に布基礎を使用した場合、根元が腐ることで耐久性も失われやすくなるのがデメリットです。また、シロアリ被害によっても構造的なリスクが高まるため、定期的な防蟻処理薬は欠かせません。
一方で、比較的安価で施工できるというメリットもあり、戸建て住宅などによく使用されています。
ベタ基礎
ベタ基礎は、建物の底一面にコンクリートの基礎を敷き詰める手法です。
地盤が安定していない場合や建物が重い場合によく用いられる基礎であり、湿気に強いのが特徴です。シロアリの被害も防ぎやすく、耐久性にも優れていることから、さまざまな建物に採用されています。
ただし、建設費用が高額になりやすく、解体工事にも手間がかかるのはデメリットです。
【基礎の種類別】解体方法・費用の目安
基礎にはいくつかの種類があり、それぞれ解体方法や費用相場が異なります。耐久性に優れた頑丈な基礎は、解体時に重機を必要とする場合もあり、費用面だけでなく工期にも余裕を持たせて計画を立てておくと安心です。
杭基礎
杭基礎の解体は、地盤と杭を縁切りするか、杭を切断する方法で進められ、杭1本あたり3万~5万円程度の費用がかかるのが一般的です。杭の本数が多くなるほど解体費用は高くなる傾向にあり、さらには杭の長さによっても費用が変動します。
杭基礎は地盤の深くに打ち込む工法のため、解体には重機が用いられるケースも少なくありません。その場合、重機の運搬に2万~3万円ほどの追加コストが発生する可能性があるでしょう。
これらの費用を合わせて、一般的な住宅の杭基礎の解体時には、100万円程度を見ておく必要があります。
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直接基礎
直接基礎のなかでも、独立基礎、布基礎、ベタ基礎それぞれで解体方法や費用の目安は異なります。順に詳しく見てみましょう。
独立基礎
独立基礎は、土地の上に建っている建物の上部さえ撤去してしまえば、比較的容易に解体できるため、一般的な住宅なら1日で作業が完了します。独立基礎の解体費用は、1か所あたり3万~20万円程度が目安です。
ほかの基礎と比べると、コストを抑えながらスムーズに工事を進めやすいといえます。
布基礎
布基礎は、基礎部分を重機で掘り起こして解体を行います。重機での掘り起こし作業にはそこまで手間がかからないため、地中埋設物などが見つからなければ、比較的スムーズに撤去を進められるでしょう。早くて1日で解体が完了します。
布基礎の解体費用は、1平方メートルあたり1,500~5,000円程度が目安です。
ベタ基礎
ベタ基礎は、床下全面をコンクリートで覆う手法であり、解体には重機が用いられます。コンクリートの量が多いぶん、解体によって発生する産業廃棄物も増える傾向です。
廃材の運搬も含めて、ベタ基礎の解体完了までには2~3日を要するでしょう。コンクリートが厚い場合や地盤を改良している場合には、4日以上かかるケースもあります。
ベタ基礎の解体費用相場は、1平方メートルあたり6,000円程度です。
まとめ
建物の解体工事を行う際、基礎を残したままにはできません。ただし、解体工事後に土地の再利用が決まっており、基礎部分を埋め立て用の骨材にするなど、有価物に加工できる場合は例外です。残した基礎部分が有価物と産業廃棄物のどちらかに該当するかは、行政の判断にゆだねられるため、事前に役所の窓口などで確認しておきましょう。
建物の基礎は、抗基礎と直接基礎の大きく2種類に分けられ、後者はさらに独立基礎・布基礎・ベタ基礎に分類が可能です。基礎の種類は、解体の進め方や費用に大きく影響します。本記事で紹介した工期・費用はあくまでも一つの目安となるため、詳細は解体業者に相談し、見積もり内容を確認してみてください。
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